利上げ競争で世界同時不況の恐れ
「週刊エコノミスト」(2022年7月5日号)の特集は、「総崩れ! 世界経済」。40年ぶりのインフレ退治に向けて利上げを急ぐ欧米主要国と新興国。利上げ競争は、コロナ禍から回復途上の各国の経済を同時不況に陥れかねない、というのだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)は6月14~15日に開催した米連邦公開市場委員会で、通常(0.25%)の3倍となる0.75%の利上げを決定した。1994年以来、28年ぶりとなる上げ幅に世界の市場は混乱した。
コロナ禍対応として各国が採用した金融緩和から利上げへと転換する「ドミノ現象」が相次いでいる。一方、緩和姿勢を堅持するのが日本。このままいけば米欧との金利差は拡大し、一段と円安圧力が高まる可能性がある、と指摘している。
インフレと景気停滞が同時に起きる「スタグフレーション」も現実味を帯びてきた。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「日本は、すでにそれに近いような状況といえる」。日本は物価高で、経済の打撃を米国よりも大きく受けやすいというのだ。
長谷川克之・東京女子大学特任教授は「日本は歴史的なインフレ、50年ぶりの円安、戦後最大の安保、電力危機の四重苦にある」と警告している。
米連邦準備制度理事会は当初、景気を冷やすことなくインフレ率を2%に引き戻す計画だったという。しかし、高進するインフレを前に軟着陸をあきらめた、というレポートも。
欧州では欧州中央銀行が7月の政策金利の引き上げを発表し、欧州で国債が売られている。とくに、高債務国イタリアなどで国債の利回り上昇が目立ち、欧州債務危機が再燃する可能性がある、と国際経済研究所上席研究員の橋本択摩氏と見ている。
ゼロコロナ政策によって景気減速が懸念される中国経済について、日本総合研究所主任研究員の関辰一氏は、ゼロコロナ政策の長期化を警戒。外資系企業は中国事業について、今一度立ち止まって考える必要がある、と警告している。
物価高が参議院選挙の焦点になっているが、世界経済はさらに深刻な状況に差し掛かっているようだ。
(渡辺淳悦)