自動車業界、変革期&半導体不足で減産...マレリの収益改善「黄色信号」
ただ、経営不振に陥った自動車部品業界を取り巻く環境、特にマレリをめぐる状況が好転しているわけではない。
マレリは、日産自動車系列のサプライヤーである旧カルソニックカンセイが前身で、いわゆる「ゴーンショック」(系列切り)、日産による連結子会社化など紆余曲折を経て、結局、日産が保有カルソニック株を2017年にKKRに売却。2019年に欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の部品部門だったマニエッティ・マレリを7200億円で買収し、現在のマレリが誕生した。
鳴り物入りのメガサプライヤーとしてのスタートだった。熱交換器や内装に強みがある旧カルソニックと、車載照明や電動パワートレインなどを手掛ける旧マニエッティというように、事業領域が重複せず、地域的にもそれぞれアジアと欧米中心という棲み分けをアピールし、幅広く稼ぐ「総合サプライヤー」を目指した。
だが、自動車業界は電動車(EV)へのシフトや自動運転など大きな変革期を迎えている。そこに、コロナ禍や半導体不足による完成車メーカーの減産が追い打ちをかけており、合併によるスケールメリットを生み出せず、マニエッティ買収資金の返済が重荷となってのしかかっている。
マレリの2020年12月期決算は282億円の最終赤字だった。21年12月期の業績は開示していないが、4期連続赤字だったとされる。債務の重荷が軽減されても、赤字体質から脱却できなければ、再建は覚束ない。ウクライナ問題の影響も含め、多くの完成車メーカーが減産を続けているだけに、収益改善は容易ではない。
あわせて、リストラ遅れも指摘される。マレリは全世界の従業員5万4000人のうち数千人削減の方針を打ち出しているが、欧州を中心に労働組合の抵抗は強く、その進捗は予断を許さない。(ジャーナリスト 済田経夫)