電気を使わず灯油、ガス使えば「脱炭素政策」に逆行
ソニーフィナンシャルグループの渡辺浩志氏と同様に、「脱炭素化の動きに逆行」すると懸念を示すのは、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏のリポート「政府の追加物価高対策の評価と節電ポイント支援策の課題」(6月21日付)ではまず、
「(節電ポイント制度は)追加的な節電の余地について利用者の間で差がある、あるいはスマホなどを使って節電ポイント制度を利用できない人が高齢者を中心に出てくる、などといった不公平感の問題を生じさせよう」
と、すでに節電している人やスマホを活用できない人に不公平だ、という問題点を指摘した。そして、脱炭素政策との整合性に疑問を投げかけた。
「脱炭素政策との整合性にも留意する必要がある。節電による不要な電力消費の削減は、脱炭素政策の観点からも望ましいが、他方で脱炭素政策のもとでは、化石燃料の利用を減らして電力の利用拡大を個人に促している側面がある。それはガスに替わって電気を利用する調理、灯油ストーブでなく電気暖房器具の利用、またガソリン車に代わる電気自動車の利用などである」
そして、こう結んでいる。
「仮に個人が、節電ポイントを得るために、冬場に電気ストーブの代わりに灯油ストーブを使う、電気自動車の利用の代わりにガソリン車を利用するようになれば、節電効果は高まる一方で、脱炭素政策には逆行してしまう。政府は、節電ポイント制度の狙いを丁寧に国民に説明し、脱炭素政策との整合性に十分配慮することが求められるだろう」
(福田和郎)