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今夏は「ラニーニャ現象」で記録的な猛暑か

   一方で、今夏は、電気代の高騰に加え、例年以上の猛暑というダブルパンチに見舞われるかもしれないと指摘するのは、第一生命経済研究所主任エコノミストの小池理人氏だ。

   小池氏のリポート「電気代の高騰と猛暑が家計を圧迫」によると、今夏は「ラニーニャ現象」によって厳しい猛暑となることが予想されているという。

   ラニーニャ現象とは、東太平洋赤道付近の海面水温が、平年より低い状態が長期間続く現象をいう。ラニーニャ現象が発生すると、西太平洋熱帯域の海面水温が上昇し、積乱雲の活動が活発となり、日本近辺では夏に太平洋高気圧が北に張り出して猛暑が続く傾向がある。

   図表1は、今年6月から10月までのラニーニャ現象の発生確率だ。6月は70%という高確率で発生すると予測されており、実際、6月25日~27日に全国各地で6月としては観測史上最高の気温を記録した。

   猛暑だった昨年は、ラニーニャ現象はゼロだったから、今年の夏はどれだけ暑くなることか。エアコンや扇風機などの使用時間が長くなり、消費電力量も増加することが想定される。

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(図表1)2022年のラニーニャ現象の発生確率(第一生命経済研究所の作成)

   それに加えて、家計の電気代負担額がいっそう大きくなる要素がある。図表2は、消費者物価指数(全国の電気代平均)と原油価格の推移だ。これをみると、昨年6月の電気代を100とすると、4月には112に上昇している。小池氏はこう指摘する。

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(図表2)消費者物価指数(電気代)の高騰と原油価格の推移(第一生命経済研究所の作成)
「仮に4月時点での水準が2022年の間続くことになれば、2人以上の世帯(総務省家計調査)での負担は、2021年と比較して年間約1万9千円程度増加することになる」

   そのうえ、テレワークの増加によって、電力消費の一部が企業から各家庭に移っている。テレワーク実施率は2019年の14.8%から2022年は27.0%にほぼ倍増している。このことから、家庭のPCや照明、エアコンにかかる電気使用量の増加を小池氏はざっとこう試算した。

「仮にエアコンの消費電力を650W、照明の消費電力を50W、ノートPCの消費電力を30W、これら電化製品がテレワークによって稼働するものとし、1日8時間、月22日テレワークを実施した場合、1か月当たりの電気代の増加額は、約3850円と算出される」

   1年間にすれば、4万6200円という高額だ。これにラニーニャ現象が引き起こす猛暑による電力消費が加わるわけだ。

   小池氏は、「今後、テレワークによる家計負担を回避するための節約行動や、政府によるポイント還元策を狙って、オフィス回帰の動きが一部で生じ、テレワーク比率を低下させる可能性もある」として、「電気代の負担は家計を強く圧迫しており、早急な支援が求められる」と、政府に対策を求めている。

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