「老いたる発展途上国」ニッポンの若者に希望を
一方、「人への投資」に関連する話題では、日本は「老いたる発展途上国」に成り下がったとして、若い世代に希望を与える政策を進めるべきだと訴えるのが、公益財団法人・国際通貨研究所上席客員研究員で京都大学名誉教授の村瀨哲司氏だ。
村瀨氏のリポート「骨太の方針2022 を考える~隠された『老いたる発展途上国』再生の鍵~」(6月21日付)では、日本の「人への投資」がいかに減少しているか、OECD(経済協力開発機構)のデータから説明する。
「(日本における)人の劣化は、博士号取得者の減少など相対的低学歴化、デジタル人材の大幅不足、世界での引用論文数の順位下落、その他各種の指標に表われている。(中略)OECDによると、日本の教育への公的支出(GDP比)は、統計対象約40か国の最下位グループに属し、2005年35位、2018年は39位で、日本より下はロシア、リトアニア、アイルランド3か国のみである。企業研修も縮小し、官民で人材育成を怠ってきたツケは大きい」
そして、日本の若者の「絶望の声」を内閣府の調査を引用しつつ、こう説明した。
「内閣府による若者の意識国際調査(2013年)では、『自分の将来に明るい希望を持っている』と答えた割合が、米国91.1%、スウェーデン90.8%、ドイツ82.4%に対して、日本の若者は61.6%と調査対象7か国(他は英仏韓)中最低で、かつ2019年には59.3%に下がっている。希望を持てない若者の割合が、他の調査対象国の4~2倍にのぼり、その理由として個人・国レベルの経済状況との相関が示唆されている」
しかし、村瀨氏は、岸田内閣の「骨太方針2022」の中の「少子化対策・こども政策」に一抹の希望を見いだした。
「こども政策については、こどもの視点に立って、必要な政策を体系的に取りまとめた上で、その充実を図り、強力に進めていく。そのために必要な安定財源については、(中略)こどもに負担を先送りすることのないよう、応能負担や歳入改革を通じて十分に安定的な財源を確保しつつ、有効性や優先順位を踏まえ、速やかに必要な支援策を講じていく」
と書かれていたからだ。
財政の健全化目標が骨抜きにされた「骨太の方針」のなかで、この箇所だけ「こどもに負担を先送りすることのないように」と記されていたのだ。村瀨氏はこう結んでいる。
「この記述は、こども政策の財源の体裁をとっているが、実はあらゆる政策に共通する基本原則である。この原則を骨太方針の中心に据えれば、老いたる途上国は間違いなく再生するだろう。遅すぎはしない。(中略)これを貫徹する政治的覚悟があれば、青少年は希望を取り戻す」