「最悪のシナリオは幸せな顔をしてやってくる」
インフレを抑え込むには経済の減速しかないというわけだが、今後はどうなるのか。「最悪のシナリオは幸せな顔をしてやってくる」と注意を呼びかけているのは三井住友DSアセットマネジメントのリポート「インフレ起点で考える、今後の相場展開とポートフォリオ戦略 『最悪』は幸せの顔をしてやってくる」(6月22日付)である。リポートでは、今後のインフレについて次の3つのシナリオを想定する=図表1参照。
(1)シナリオ1:インフレが高止まりして「スタグフレーション」(インフレと景気後退の同時進行)に陥る。「分散強化」による「守り」の投資になる。
(2)シナリオ2:インフレ減速で「リスクオン相場」(リスクを取ってリターンを追求する)に。「攻め」の投資に。
(3)シナリオ3:インフレ見通しを大きく変える出来事、たとえばロシアとウクライナの電撃的な和平合意や、米国とイランの核合意によるイラン産原油の供給開始などをきっかけにインフレが鎮静化、世界は一気にデフレに逆戻りする。
シナリオ3になると、大幅利上げの副作用である「世界経済の減速」や「金融市場の動揺」を警戒していた主要国の中央銀行が、一気に金融緩和に転じる可能性が出てくる。そして、金融市場はシナリオ2以上の勢い、規模での「リスクオン」となり、株買い、債券買いなど安全資産からリスク資産への資金シフトが起こる。
リポートはこう指摘する。
「シナリオ3は理想的な展開にも感じられますが、果たして本当にそうでしょうか。こうした金融緩和による危機回避策は、リーマンショックを始めとする一連の金融危機の際に、これまで再三繰り返されてきました」
「シナリオ3が現実化すると、世界経済は『大規模な金融緩和なしでは活発な経済活動を維持できない』との考え方が現実味を帯びてきます。そしてわたしたちは、大規模な金融緩和の副作用である、金融資産・不動産のバリュエーションを無視した高騰、(中略)低リスク・高リターンを前提とした投機筋などによる過度なリスク投資、などと共存しながら生きていかなくてはならないことになります。これらは所得格差を助長し、社会の不安定化につながる恐れがあります」
そして、こう結んでいる。
「この中での『最悪』な事態は、一見すると幸せそうな『インフレ鎮静化・デフレ復活』シナリオではないでしょうか」