ウォール街戦々恐々! 「リーマンショックよりひどい」とエコノミスト指摘、FRBも見放す米国経済どこへ行く?

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   「リーマンショック時よりひどくなるかもしれない」。ウォール街が戦々恐々になっているという。

   消費者物価指数、失業率、実質国内総生産(GDP)成長率......経済指標は予想を上回る悪い数字ばかりだ。折しも、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は米議会で景気後退を恐れず、インフレ退治に全力を挙げる姿勢を鮮明に示した。

   株式市場の大幅下落が続く米国経済はどこへ行くのか。エコノミストの分析から読み解くと――。

  • 株価の下落が続くニューヨーク証券取引所
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米国エコノミスト、世界金融危機より悪い経済減速を予測

   米国メディアの報道をまとめると、パウエルFRB議長は2022年6月22日(現地時間)、上院銀行委員会の公聴会で証言。インフレの抑制について聞かれ、「リセッション(景気後退)を招くつもりはないが、物価の安定が絶対に必要だ」と強調、金融引き締めを加速させていく方針を改めて示した。

   経済のソフトランディング(軟着陸)は可能かと問われて、「非常に困難」だと述べた。そして、「別のリスクは、われわれが物価安定を取り戻すことができず、経済に高インフレを根付かせてしまうことだ。任務に失敗は許されない。インフレ率を2%に戻さなければならない」と明言。景気後退のリスクを恐れず、インフレを抑え込む姿勢を明確にした。

難しい舵取りを迫られるFRBパウエル議長(FRB公式サイトより)
難しい舵取りを迫られるFRBパウエル議長(FRB公式サイトより)

   記録的なインフレの抑制か、経済の減速か。米国が陥ったジレンマをエコノミストたちはどう見ているのか。

   「米国のエコノミストはリーマンショック時よりも悪い経済減速を予測している」と警戒するのは、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。

   木内氏のリポート「米国景気後退見通しが強まる:FRBは景気を犠牲にして物価安定の回復を目指すか?」(6月22日付)では、米ウォールストリート・ジャーナル紙の最新のエコノミスト調査を紹介している。

   それによると、エコノミストたちは今後1年の間に米国が景気後退に陥る確率を44%に引き上げた。これは、通常であれば景気後退入り直前か景気後退期間中の調査で得られる数字で、今年1月調査では確率は18%、4月調査では28%だった。

   この数字がいかに悪いかというと、リーマンショックとその後に起こった世界金融危機(2007年~2010年)の初期、2007年12月に同紙が行った調査でも38%だったことからもわかる。また、新型コロナが米国を席巻し始めた2020年2月調査でも26%だった。それらよりも、現時点での景気後退予想のほうが6%~18%ポイント高いのだ。

   そんななかで、経済の舵取りに追われるFRBの「二兎を追う作戦」の危うさを木内氏はこう指摘する。

「急速な利上げによって物価の高騰を抑え込む一方、景気はそれほど悪化させず、減速しても失速はさせない『グロースリセッション』(景気後退するものも経済成長率はプラスを保つ)をFRBは目指している(中略)。これは物価の安定と景気の安定の双方を求める『二兎追う』政策である」
「中途半端な金融引き締めによって物価高騰が長期化し、それがいずれ経済を著しく悪化させる形となり、結局、『二兎追う者は一兎も得ず』に陥りやすい。そこで、『二兎追う』ことをあきらめるとすれば、FRBは景気を犠牲にしても物価安定確保を優先するのではないか」
中間選挙を控え、バイデン大統領のFRBへの政治介入はあるのだろうか?(ホワイトハウス公式サイトより)
中間選挙を控え、バイデン大統領のFRBへの政治介入はあるのだろうか?(ホワイトハウス公式サイトより)

   そのFRBの前に立ちはだかるのが、11月に行われる米国中間選挙だ。

「今後米国景気の減速が顕著になれば、11月の中間選挙を前に、景気を優先するバイデン政権と物価安定を優先するFRBとの間に軋轢が生じ、FRBの政策が政治介入を受ける可能性も出てきかねない」

   そのうえ、ウクライナ情勢悪化による世界的なエネルギー価格と食料品価格の高騰が加わってくる。

「結局は、FRBが景気を犠牲にしても物価安定を回復する姿勢を続けるなか、米国景気、世界景気が顕著に減速し、需要の後退が価格高騰に歯止めをかける姿となりやすいのではないか。言い方を変えれば、歴史的な物価高騰は、景気を犠牲にしない限り、短期的には抑え込むことは難しいのではないか」

   というのだ。

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