ビットコインやイーサリアムといった暗号資産の下落が続いている。米国の仮想通貨融資企業のセルシウス・ネットワークが顧客資産を出金停止したり、仮想通貨に特化したヘッジファンドのスリーアローズ・キャピタル(3AC)の経営危機が浮上したりと、波乱要因が次々と表面化した。
そんな荒れ相場の暗号資産バトル第3節(2022年6月13日週)で、北海道大学の花野直樹さんは慎重な構え。東京大学の迫嵩明さんも「傍観」を決め込む。下落相場に果敢に挑む明治大学の城正人さんは、保有していたビットコインのポジションを損切り。傷が軽いうちに手当てした。
現物取引は難しい(北海道大学 花野直樹さん)
【総括】
今週(2022年6月13日週)の仮想通貨市場は、米国株指数につられて下げる展開から始まりました。僕は売りを狙っており、13日7時時点でビットコイン(BTC)が200MAより下、MACD(マックディー)も売りサイン。下落の勢いも十分と判断し、売りエントリー! ......しようと思ったのですが、仮想通貨現物では取引所での空売りができないことに気が付きました。
販売所では空売りができるようですが、手数料が数%と保有期間が数時間から数日の短期トレードをする自分にとっては致命的な高さです。結局、売りは見送り。その後、BTCは20%近く下げたため手数料が高くても売っておけばよかったと後悔しました。
ふだんはCFD(差金決済取引)、FXなどいつでも売買できる商品を扱っているだけに、現物取引の難しさを痛感しました。今後はその辺も考慮して戦略を立てていきたいと思います。
今週の仮想通貨関連のニュースは、仮想通貨融資企業の米CelusiusNetwork(セルシウス)が顧客資産の出金停止、3ArrowsCapital(3AC=スリーアローズ・キャピタル。仮想通貨に特化したヘッジファンドでベンチャーキャピタル)の経営危機の噂が大きなニュースだったと思います。
セルシウスは仮想通貨のローンや預金金利、送金システムのプラットフォームを提供する会社です。その会社が顧客資産の出金、スワップ、送金を一時停止しました。約38000ETH(イーサリアム、100億円)の秘密鍵の紛失を隠していたようで、それを受けて顧客が資産を出金しようと殺到したのが原因だそうです。
セルシウスのホームページを見てみると、Defi(分散型金融)をうたっていますが、そもそも資金を管理しているのはスマートコントラクト(ブロックチェーン上で契約を自動的に実行する仕組みのこと。イーサリアムなど多くの仮想通貨で実装されている)ではなく、運営で実態はCefi(中央集権金融)であり、かなりハイリスクな運用をしていたとの噂もあります。
また3ACの経営危機に関してはイーサリアムが急落する中でDefiプラットフォームに資金を補充するため資産を移動したことからマージンコールが発生しているとの噂が立ちました。さらに3ACは先日大暴落した暗号資産のLUNAを保有しており、3ACはテラ、セルシウスに続き崩壊する会社だといわれています。
今週は本当にイベントが多く、SNSなども見てみると相場観や仮想通貨自体について、いろいろ考えさせられる1週間でした。
また来週も気を引き締めて臨みたいと思います。
◆ 池田昇太のワンポイントアドバイス
ここ最近の下落相場で「売り」への戦略に舵を切ろうとされたのは良い判断と思います。先日アメリカでもショート・ビットコインETFが取り扱われるようになったため、売りへの警戒は未だ強いものと推測できます。
しかし取引所での空売りはレバレッジ取引になるため、今回の暗号資産バトルで使用できないのが難点ですね。そのため「底値で買い、高値で売る」といった、トレードの基本的な戦略が活用できるでしょう。
2018年のように暗号資産関連のヘッジファンドの倒産の危機が感じられれば、3ACも危ういかもしれません。しばらくは様子を見つつ、なるべくリスクを避けるようにした方が良いでしょう。
前週からの損益 プラス・マイナスゼロ
6月17日現在 1万円
北大金融研究会の所属。ふだんはテクニカル分析を使った株式の短期トレードをしています。やるからには1位をとれるよう、頑張ります!
大暴落で窮地に......(明治大学 城正人さん)
今週(6月13日週)は悲劇の週となりました。ビットコイン価格は2021年の安値である3万ドルを割れ、2万ドルへの大暴落を記録。「バブル高値は割れない」というこれまでのアノマリー(理論的根拠があるわけではないが、よく当たる相場での経験則のこと)は見事破られてしまいました。
果たして「底」はいつ、いくらなのでしょうか。
今回は価格には直接影響しないものの、重要な参考資料となるマイニングコストの観点で、今後の価格推移を分析してみます。
◆ マイニングについて
さて、かく言う私も自宅マイニングを行っています。卒FIT(太陽光発電の固定価格買取期間満了後)の実質8円キロワット時という非常に低コストな電力を利用しマイニングを継続してきました。
「国内ではエネルギー価格が高く採算が取れない」などと言われることもありますが、少なくとも太陽光発電によってもたらされた格安の電力を利用すれば、収益性は諸外国にも劣りません。
しかし、高止まりしたハッシュレートにイーサリアム(ETH)価格の大暴落。極め付けは気温の上昇とファンの全力回転、これらの要因により収益性は急激に悪化。私は断腸の思いで装置を停止しました。
世界には「マイニングを事業として行う企業」が存在します。たとえば、mara,riotがその一つです。マイナーたちの損益分岐点はいったい、いくらぐらいなのでしょうか――。各国のマイナーたちの損益分点について考察してみます。価格に直接的な影響はないとはいえ、底を探るうえで参考になると思います。
ビットコインにはSHA-256というハッシュ関数が利用されています。このsha256を計算しマイニングしていくわけですが、そのためだけに開発された「ASIC」という装置が存在します。今回はコストの計算として2022年6月に発売されたantminer S19 XPという最新機種でコストの予想をしてみます。
◆ ハッシュレートの地域分布
コストを試算するうえで最も大きな変数になるのが電気代。より電気代の安く寒冷な土地であればあるほど収益性が高いわけです。どの地域でマイニングが行われているのかをチェックすることは非常に重要です。以下は2022年1月時点のハッシュレートの地域分布と電気代です。
(出典:University of CAMBRIDGE Judge Business School)
昨年、中国がマイニングを禁止するとのニュースがありましたが、すでに20%超のハッシュレート(マイニングをする際の1秒あたりの計算力、採掘速度のこと)を担っており、ここまで復活してるとは驚かされました。
それでは、次の条件でさっそく試算してみましょう。
● 最新機種 antminer S19 XP(140Th/s)を利用
● ディフィカルティは固定
● 上記の事業用電気料金を利用
想定していたより損益分岐点が低く驚きました。もちろん最新機種であり、減価償却費に地代、メンテナンス費用など一切除いた結果のため、既に損益分岐点を割ったマイナーも多い状況だと思います。
しかし、最悪の場合カザフスタンでのマイニング損益分岐点程度までの下落を覚悟しておいたほうが良いと考えます。
【今週の取引】
3万ドル割れた時点で逆指値を設定しており、起床したら実行されていました。今後は2万ドルの壁の様子を見ながら再度購入を検討します。
取引日時 取引通貨 取引額 取引結果
2020/6/13 ビットコイン売り 0.0004BTC(@369万5000円) ▲190円
先週から持ち越したビットコインのポジションを損切りしました。このポジションは先週187円の含み損が発生しており、今週は3円の含み損がさらに発生。そのため、取引結果は190円の損失となりました。
それでは、また来週!
前週からの損益 マイナス3円
6月17日現在 9816円
◆ 池田昇太のワンポイントアドバイス
太陽光を利用したマイニングは評判が良いですよね。筆者はマイニングについては詳しくないので、ハッシュレートや地域分布・損益分岐点などのお話は勉強になりました。
ここしばらくの暗号資産の下落相場を見ると、底値がどこなのかが気になるところですね。先日ビットコインはいよいよ2万ドルのラインをブレイクしてしまい、1万7500ドルあたりで一度反発しています。2017年のバブルの時の高値が1万9000ドルほどでしたので、この辺りが意識されている価格帯であるのかもしれません。
とはいえ、2017年から1年間かけて価格が80%ほど下落した過去もありますので、価格がどう変動するのか、まだまだ注視する必要がありそうです。
2021年に引き続き、出場します! 投資対象として仮想通貨に興味を持つも、その技術の持つポテンシャルに惹かれDapp開発に着手。投資家としてだけでなく、開発者としての視点からの投資戦略も立てていきます!
Twitter: https://twitter.com/dennoah_jo
続く「下げ相場」に傍観決め込む(東京大学 迫嵩明さん)
今週(6月13日週)も相変わらずのベアマーケット(弱気相場、下げ相場)なので、今回も傍観しました。なんでもポジションを取るのが正解ではなく、然るべきタイミングが来たら入ろうと考えています。しばしお待ちを!
今後ともよろしくお願いします。
前週からの損益 プラス・マイナスゼロ
6月17日現在 1万円
◆ 池田昇太のワンポイントアドバイス
今回の暴落はこれまでとはやや異なる様子で、しばらくは下げ相場が続く可能性もあるでしょう。チャートやニュースを確認しつつ、自分の戦略どおりに、必要に応じてポジションを持つスタンスが大切かと思います。
学生投資連合USIC代表
高校3年生の時に株式投資のおもしろさに目覚める。日本株、米国株、仮想通貨投資を行う。長期的に伸びる市場でビジネスを展開している企業に長期投資することをモットーとしており、テンバガーを虎視眈々と狙っている。 金融を学ぶ「おもしろさ」、投資を始める「意義」を多くの人に知ってほしいと切に願う。
学生投資連合USIC:https://www.usic2008.org/
◆ ◆ アドバイザーのプロフィール
フリーランスのWebディレクター。金融系メディアを対象に執筆やディレクター業務に従事。投資歴7年。FXと仮想通貨をメインにトレードしています。ファンダメンタル分析よりかはテクニカル分析を好む。最近はNFT(非代替性トークン)の詐欺事例、法的問題について関心あり。
大学対抗戦「暗号資産バトル」競技ルール
・元本は1万円。
・通貨の選定は自由。ただし、国内の事業者で買える暗号資産に限定。
・レバレッジはかけられません。
・20%を超えて下げた場合は、強制的に取引を停止(ロスカット)とする。
・元本割れは1回まで。2回、資産を失った場合は、その時点でリタイアとする。
・運用期間は6か月。最終週時点での資産増減額で順位を決める。