話題の「令和4年版 男女共同参画白書」を読む(1)...「晩婚化」以上に「未婚化」への危惧 安心して結婚できる雇用環境、支援策を(鷲尾香一)

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   「20~39歳の未婚男性のうち40%近くが、これまで恋人がいたことがない」という内閣府の調査結果が、さまざまなメディアに取り上げられて話題となった。

   ただ、それらの取り上げ方は興味本位の断片的なものでしかなく、その問題点を指摘していないものも多い。そこで、この調査で関連するところを取り上げ、問題点を指摘したい。

  • 「令和4年版男女共同参画白書」に注目(写真はイメージ)
    「令和4年版男女共同参画白書」に注目(写真はイメージ)
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40~54歳の男性23.5%、女性13.2%「恋人いたことない」

   内閣府は2022年6月14日、「令和4年版 男女共同参画白書」と「令和3年度 人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査報告書」を発表した。

   この中で、調査項目の1つとして結婚に対する意識調査が行われている。

   まず、未婚者に対して現在の配偶者(事実婚・内縁)の有無などを調査しており、それによると20代男性の65.8%、20代女性の51.4%が「配偶者・恋人はいない」と回答している。

   「配偶者・恋人はいない」は男性の場合、30代で35.5%、40代で28.4%に、女性は30代で27.0%、40代で22.1%に減少するにだが、それでも未婚者の30代、40代では男性の約3割、女性の約2割という比率で「恋人と呼べる存在がいない」という結果が出ている=表1

   男女とも高い比率で「恋人と呼べる存在がいない」との結果が出たため、未婚者に対して、「これまでの恋人の数」を調査した。その結果、20~39歳の男性の37.6%に「恋人がいたことがない」という衝撃的な事実が判明し、多くのメディアが取り上げるに至った。

   もちろん、いわゆる結婚適齢期の20~39歳の男性37.6%に「恋人がいたことがない」というのも衝撃的だが、20~39歳の女性も24.1%も「恋人がいたことがない」という結果が出ている。

   それよりも驚いたのが、40~54歳の男性の23.5%、女性の13.2%が、「恋人がいたことがない」と回答していることだ=表2

   これは、「晩婚化」が進んでいるのではなく、「未婚化」が進んでいることを表していると言えそうだからだ。

40代未婚者の「結婚の意志なし」、女性が男性を上回る

   そこで調査は、未婚者に対して、結婚の意思を確かめている。その結果は、男性は「結婚の意志あり」が20代54.4%、30代46.4%、40代36.0%と、徐々に低下。「結婚の意思なし」が20代19.3%、30代26.5%、40代29.8%と、徐々に上昇する。

   一方で女性でも、「結婚の意志あり」が20代64.6%、30代46.4%、40代31.7%と低下し、「結婚の意思なし」が20代14.0%、30代25.4%、40代31.4%と上昇した。

   ここで注目したいのは、40代では「結婚の意志なし」が、女性が男性を上回ることだ。そして、「結婚の意思あり」では、女性の方が男性に比べて低い=表3

   筆者がなぜこの問題をピックアップしたのかと言えば、少子化の最大の要因は「婚姻数の減少」にあると考えているからだ。

   日本人は基本的に結婚→妊娠→出産というパターンを辿る。したがって、婚姻数が減少すれば、必然的に出生数も減少することになる。

   これまで政府は少子化対策として、さまざまな支援策を打ち出したが、そのほとんどは妊娠・出産・子育てのためのものだ。

   少子化が長期間継続していることで、人口減少が進んでおり、それに合わせて出産適齢期の女性の数も減少している。結婚→妊娠→出産というパターンを辿るのであれば、まずは婚姻数を増やすことが、少子化対策の第一歩となるだろう。

   そのために政府は、安心して結婚できる雇用環境と、安心して子どもを産み育てられる経済面での安定が得られる対策を打ち出すことで、婚姻数の増加を図っていかなければならい。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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