腕時計のように体に身に着けるだけで、歩数からカロリー消費量、心拍数、血圧、睡眠の質、生理のリズムまでバッチリ教えてくれる、アナタの健康の守り神、ウェアラブル端末。
コロナ禍の2020年ごろから健康志向の高まりもあって、日本で普及し始めたウェアラブル端末だが、いったいどのくらい利用者がいるのだろうか。モバイル市場専門の調査会社「MMD研究所」が2022年5月17日、「ヘルスケアとウェアラブル端末に関する調査」を発表した。今回の調査によると、利用者はまだ全体の4%ほどだが、健康に関心の高い人々は、なかなか面白い使い方をしているようで...。
「睡眠の質」「生理サイクル」「カロリー消費量」もわかる
ウェアラブル端末とは、スマートフォンのように持ち運べるものとは違い、主に腕など身に着けたまま使える端末のことをいう。米アップル社の「Apple Watch」(アップルウォッチ)に代表されるスマートウォッチタイプ(腕時計型)のほか、米Google傘下に入ったウェアラブル端末の先駆け「Fitbit」(フィットビット)や、米のGPSパイオニア企業「GARMIN」(ガーミン)の一部機種にみられるスマートバンドタイプ(リストバンド型)の2つに分かれる。
両タイプとも、健康志向の高まりによって、さまざまな機能が付いている。身に着けるだけで、「心拍数」「歩数」「移動した距離」「運動量」「消費カロリー」「睡眠時間と睡眠の深さ、浅さなど睡眠の質」「血圧」などを計測・記録する。また、女性向けには「生理のサイクル」を表示し、体調のリズムを知らせる機能がついているタイプもある。
これを手首にはめたまま使うと、ランニング・サイクリング・筋トレ・ヨガといった本格的なトレーニングやエクササイズで、どれだけ効果が上がっているかが目に見えてわかる。また、スマートフォンやパソコンと連携、記録を蓄積することができるし、トレーニングの指導を受けているインストラクターの元に送信して、今後の練習メニューの改善に役立てることもできる。
腕時計型のスマートウォッチは、時計画面を搭載しており、電話やメールもえきるので、そのままオフィスでも使えるのがメリットだ。リストバンド型のスマートバンドタイプは、ランニングやテニスなど、どちらかというと激しいスポーツに向いていると言えそうだ。こちらは24時間装着できるので、睡眠の質をチェックするのに便利だ。
30代、40代のほうが50代より健康データの記録に熱心
さて、MMD研究所では、まず18歳~79歳の男女1万5000人を対象に、健康に関する記録をしているか聞いた。「記録している」が39.6%、「記録していない」が60.4%となった。年代別で見ると、「記録している」人が最も多いのが70代(54.0%)、次いで60代(41.7%)と、やはりシニア層の関心が高い。
ところが、働き盛り世代で見てみると、40代(36.4%)と30代(35.9%)のほうが50代(35.3%)よりも健康データを記録する人が、やや多いという意外な結果になった。これは50代が職場では管理職になり、家庭では子どもが進学時期にさしかかるなど、もっとも多忙な時期にあることが影響して、健康データの記録どころではないということなのだろうか。
次に、健康に関する記録をしている5940人に、記録している項目を聞くと(複数回答)、「身長や体重、BMI」(45.4%)が最も多く、次いで「血圧」(39.3%)、「体温」(25.9%)、「生理周期」(20.2%)となった=図表1参照。また、記録のつけ方を聞くと、パソコンやスマホ、ウェアラブル端末など「デジタル媒体」(47.1%)、「アナログ媒体、デジタル媒体併用」(15.1%)、「アナログ媒体」(37.8%)となった=図表2参照。併用を含めると、デジタルを活用している人が6割以上だ。
実際に、健康に関する記録をしている5940人に、ウェアラブル端末を持っているか聞くと、「持っている」が約1割の10.1%、「持っていない」が約9割の89.9%となった。今回の調査対象者全員(1万5000人)からみると、持っている人は4%ほどしかいないことになる。
持っているウェアラブル端末は? ダントツ人気はやっぱり?!
ほかに、ウェアラブル端末を持っている740人に、メイン利用のウェアラブル端末を聞くと、「Apple Watch」(アップルウォッチ)が36.9%と、ダントツに多い。次いで、「腕時計型のFitbit」(フィットビット)と「腕時計型のGarmin」(ガーミン)がともに8.2%、「リストバンド型のFitbit」(フィットビット)が4.7%、中国の総合家電メーカー「Xiaomi(シャミオ)Miスマートバンド」が4.5%となった=図表3参照。
ところで、ウェアラブル端末を持っている人は、どんな使い方をしているのだろうか。各機種にはさまざまな機能が付いているので、それぞれのタイプを代表してトップのApple Watch利用者(150人)、スマートウォッチ型利用者(150人)、スマートバンド型利用者(100人)の計400人を選び、メインの使い方(複数回答)を聞いた。
すると、「歩数を測定できる機能」(67.3%)が最も多く、次いで「スマートフォンと連携して通知などを見られる機能」(66.3%)、「ウォーキングやランニングの記録してくれる機能」(62.0%)、「心拍数を計測できる機能」と続いた=図表4参照。主に、ウォーキングやランニングなどの有酸素運動で活用している人が多いようだ。
ウェアラブル端末別、それぞれ微妙に異なる使い方とは?
ところが、それぞれのウェアラブル端末別に利用している「機能のランキング」を見ると(複数回答可)、面白い結果が出た。 Apple Watch利用者は「スマートフォンと連携して通知などを見られる機能」(71.3%)と最も多く、「ウォーキングやランニングの記録してくれる機能」(56.7%)が2位となった=図表5参照。
しかし、スマートウォッチ利用者とスマートバンド利用者の1位は「歩数を測定できる機能」(それぞれ74.0%、78.0%)だった。しかも、スマートバンド利用者の2位には「睡眠の質を測定してくれる機能」(68.0%)が浮上した。「睡眠の質」に関しては、Apple Watchでは上位5位には入らない。代わりに、「決済できる機能」5位に入っている=再び、図表5参照。
オフィスでのビジネスの場でも活用できるApple Watch、24時間就寝時でも体調を知ることができるスマートバンド、両者を合わせた機能を併せ持つスマートウォッチ......。それぞれ、自分に合った使い方をしている様子がうかがえた。
調査は2022年4月4日~4月7日、18歳~79歳の男女1万5000人を対象にインターネットで予備調査を行い、ウェアラブル端末を持っている人を中心に本調査を行った。
(福田和郎)