総裁選などで言及した「金融所得課税強化」に市場反発
首相は就任前後には、格差是正を明確に語っていた。
2021年10月8日、衆参両院の本会議で、初めての所信表明演説に立ち、「私が目指すのは新しい資本主義」だと宣言。新自由主義的な政策が、「富めるものと、富まざるものとの深刻な分断を生んだ」と指摘し、「成長と分配の好循環」を訴えた。
成長と効率を優先する新自由主義的な経済政策とされたアベノミクスによって、非正規雇用が4割を占めるまでに増えるといった日本経済のひずみを是正しようという意気込みを語ったのだ。
ところが、その「目玉」の金融所得課税の強化でつまずく。
分配政策として、総裁選などで言及したが、これが投資にはマイナスと受け止められた。日経平均株価は新政権発足を挟んで8営業日連続で下落、ツイッターで「岸田ショック」がトレンド入りした。このため、金融所得課税は棚上げされ、引き続き検討課題としてはいるが、今回の実行計画にも入らなかった。
この間、安倍晋三元首相は、自身の経済政策であるアベノミクスを否定するような動きを強くけん制し、財政運営などに直々に注文を付けてきた。
今回の実行計画は、そうした圧力に押された結果といえる。「人への投資」も、分配政策の一つとの位置づけだが、「政策の重点が非正規など弱者の不安解消より、成長戦略の一環に変質していった」(大手紙政治担当論説委員)との見方もある。