いま注目の「木造マンション」とは? カーボン・ニュートラル実現に向け、関心高まる...専門家がメリット&デメリット解説!【2】(中山登志朗)

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   前回のコラム「最近、コロナ禍でひそかに人気急上昇中! 原状回復の必要ナシ「DIY型賃貸住宅」ってなんだ?」では、賃貸市場で注目される「DIY型賃貸」という仕組みを紹介しましたので、今回はマンションでの新たな取り組みを紹介しようと思います。

   これまで、マンションというと、コンクリートで固められた大きくて強靭な住宅というイメージがありました。

   分類すると、マンションは「SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造」、もしくは、「RC(鉄筋コンクリート)造」が圧倒的多数を占めています。そして、残りもほとんどが「S(鉄骨)造」であり、これには「鋼材の厚さが6mm以上の重量鉄骨造」と、「6mm未満の軽量鉄骨造」があります。

   つまり、鉄とコンクリートで造られた共同住宅はマンション。木造の共同住宅はアパート、もしくは、連棟型のタウンハウスやテラスハウスというのが一般的なイメージではないでしょうか。

   ところが、です。そこに、新たに「木造マンション」という概念が加わることになったのです。

   木造のオフィスビルというのはこれまでもいくつかありました。しかし、2021年末から、筆者が所属するLIFULL HOME'Sほか不動産ポータルサイト各社が、「木造マンション」という区分で広告掲載を可能にしたことにより、新たに木造のマンションが社会に広く知られることになりました。

  • 注目の「木造マンション」とは?(写真はイメージ)
    注目の「木造マンション」とは?(写真はイメージ)
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木造マンションの「メリット」とは?

   <いま注目の「木造マンション」とは? カーボン・ニュートラル実現に向け、関心高まる...専門家がメリット&デメリット解説!【1】(中山登志朗)>の続きです。ここでは、「木造マンション」のメリット、デメリットを中心に解説していきます。

   マンションを含む木造大規模建築物のメリットは、【1】の記事で挙げた以外にも数多くあります。

   鉄骨やRC造よりも軽量で、工事期間の短縮とコストの削減が可能となること(モクシオン稲城は着工から竣工までわずか1年でした)。輸入資材に頼らず、国内の木材資源の有効活用が可能なこと。自然林および人工林の育成健全化によって、衰退している国内林業の活性化に資すること、などが挙げられます。

   つまり、日本の林業の再活性化を促すことで、CO2の抑制にもつながるため、まさに一石二鳥の施策というわけです。また、通気性や吸湿性に優れ、日本の高温多湿な気候にも柔軟に対応する素材としての快適性や柔らかさ、香りによるリラックス効果などもメリットとして挙げられます。

木造マンションの「デメリット」とは?

   反対に、デメリットがないのかというと、よく指摘されるのが耐火性能や、遮音性能がRC造に比べて、劣ることです。

   しかし、現実問題として、RC造の建築物自体は不燃性が高くても、内部の壁や床および調度品などはほぼ全て可燃物質です。

   木材は鋼材に比べると燃えやすいのは確かですが、住宅建材のようなサイズであれば、熱伝導が遅いため、火がついてからしばらくは表面だけが燃えて炭化し内部まで火が通るのには時間がかかります。

   一方、鉄を始めとした鋼材は、それ自体は不燃物ですが、熱伝導率が高く、火災時には温度が急上昇し、強度を失って曲がることもあります。

   また、鋼材を伝わった熱によって、建物の別の箇所から出火することもあり得るので、総合力でいうと大きな違いはないと言えます。さらに、遮音性能についても、近年では技術的にRC造と変わらない性能を実現できるようになっています。

   なお、木造マンションと表記するには、一定の性能を有することが必要とされています。

   マンション=共同住宅であることと3階建以上であることに加え、住宅性能表示制度による住宅性能評価書の取得を必須とし、以下の等級条件を満たすことが求められています。

劣化対策等級(構造躯体等)が等級3かつ以下の(1)もしくは(2)のどちらかの等級・条件を満たす。
(1)耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)が等級3
(2)耐火等級(延焼の恐れがある部分(開口部以外))が等級4もしくは耐火構造である

   新たな住宅のスタイルとして、また、カーボン・ニュートラル実現の切り札として、木造マンションや木造オフィスビルは今後普及を促進してもらいたい建築物だと言えるでしょう。

   従来の「木造住宅」のイメージ=弱い、燃えやすいというのは、すでに過去のものと言えますから、地球温暖化を防ぎ、将来の日本の国土を安全にするためにも積極的に木造建築物を活用していきたいものです。

(中山登志朗)

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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