いま注目の「木造マンション」とは? カーボン・ニュートラル実現に向け、関心高まる...専門家がメリット&デメリット解説!【2】(中山登志朗)

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木造マンションの「デメリット」とは?

   反対に、デメリットがないのかというと、よく指摘されるのが耐火性能や、遮音性能がRC造に比べて、劣ることです。

   しかし、現実問題として、RC造の建築物自体は不燃性が高くても、内部の壁や床および調度品などはほぼ全て可燃物質です。

   木材は鋼材に比べると燃えやすいのは確かですが、住宅建材のようなサイズであれば、熱伝導が遅いため、火がついてからしばらくは表面だけが燃えて炭化し内部まで火が通るのには時間がかかります。

   一方、鉄を始めとした鋼材は、それ自体は不燃物ですが、熱伝導率が高く、火災時には温度が急上昇し、強度を失って曲がることもあります。

   また、鋼材を伝わった熱によって、建物の別の箇所から出火することもあり得るので、総合力でいうと大きな違いはないと言えます。さらに、遮音性能についても、近年では技術的にRC造と変わらない性能を実現できるようになっています。

   なお、木造マンションと表記するには、一定の性能を有することが必要とされています。

   マンション=共同住宅であることと3階建以上であることに加え、住宅性能表示制度による住宅性能評価書の取得を必須とし、以下の等級条件を満たすことが求められています。

劣化対策等級(構造躯体等)が等級3かつ以下の(1)もしくは(2)のどちらかの等級・条件を満たす。
(1)耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)が等級3
(2)耐火等級(延焼の恐れがある部分(開口部以外))が等級4もしくは耐火構造である

   新たな住宅のスタイルとして、また、カーボン・ニュートラル実現の切り札として、木造マンションや木造オフィスビルは今後普及を促進してもらいたい建築物だと言えるでしょう。

   従来の「木造住宅」のイメージ=弱い、燃えやすいというのは、すでに過去のものと言えますから、地球温暖化を防ぎ、将来の日本の国土を安全にするためにも積極的に木造建築物を活用していきたいものです。

(中山登志朗)

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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