金融政策見直しは黒田総裁の退任後?
「急速な円安の進行は日本経済にとってマイナス。好ましくない」
13日午後の参院決算委員会。135円を超える円安について問われた日銀の黒田東彦総裁は、こう強調してみせた。
その場が一気にしらけた雰囲気に包まれたのは言うまでもない。現在の円安環境を作り出している張本人の一人こそが、黒田氏だからだ。
世界の中央銀行はいま、新型コロナウイルス対応で導入した金融緩和策を見直し、利上げなど金融政策の引き締めに走り出している。
利上げペースを加速している米英に続き、金融緩和策を続けてきた欧州中央銀行(ECB)も6月9日の理事会で7月から利上げを開始すると表明した。
金融政策を引き締めることで需要を抑制し、過度なインフレを抑える狙いだ。
これに対し、黒田・日銀は日本経済がまだ回復途上にあるとして、大規模な金融緩和を継続する姿勢を変えていない。
日本と海外の金融政策の違いを見た投資家が、しばらく金利がほとんど付きそうにない日本を見限って円を売り、代わって金利が上昇しているドルやユーロに乗り換えているのが現在の姿だ。
「このままでは政治や国民の不満が一気に日銀に向かいかねない」
こう危惧するのは、日銀の現役職員だ。
「すぐに謝罪・撤回に追い込まれた『家計は値上げを受け入れている』発言を含め、国民は黒田総裁の『上から目線』の評論家のような態度に反発を強めている。いくら言葉で『円安は好ましくない』と言っても、金融緩和の変更をする気がない現状では説得力がない。このままでは日銀の声は国民にも、市場にもまったく届かなくなる」
黒田総裁の任期は2023年4月。市場では「日銀が金融政策を見直すとすれば、黒田氏の退任後だろう」という観測も広がる。
説得力を失った政府・日銀はそれまで耐えられるのか。(ジャーナリスト 白井俊郎)