FRBは「市場が0.75%の利上げを望むから...」
ところで、金融市場は6月14日、15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で「0.75%の利上げ」が発表されるかどうかを、固唾を飲んで見守っているが――。
野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は、リポート「FOMCで0.75%の利上げはあるか」(6月14日付)のなかで、ズバリ「可能性は5割以下」と答えている。その理由はこうだ。
(1)パウエルFRB議長は6月、7月のFOMCで0.5%ずつの利上げが実施される可能性を示唆し、それを金融市場に織り込ませてきた。FRBは金融市場にサプライズを与え混乱させることを避けようと、慎重に市場の期待をコントロールしているからだ。現状では、FRBが0.75%の利上げを行うとの意図を市場に伝えていないから、利上げ幅は0.5%になると考えるのが自然だ。
つまり、FRBは無用の混乱を避けるために、市場の「期待」を後追いして「利上げ」を行ってくる、というわけだ。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル紙などの報道によって「0.75%の利上げ説」が浮上した。この場合は、どうなるのか。
(2)0.75%の利上げ見通しが金融市場に織り込まれれば、FRBが0.75%の利上げを行っても市場が混乱するリスクは限られる。それはFRBが事前に市場に0.75%の利上げの意図を伝えて織り込ませたことと同じ効果を持つ。だから、FRBが実際に0.75%の利上げを行うかどうかは、市場がどの程度織り込むかに左右される。
(3)そこで、米国の政策金利に影響を与えるフェデラル・ファンド(FF)金利先物市場を見ると、6月物は0.75%の利上げを十分には織り込んでいない。この点からFRBが0.75%の利上げを行う可能性は、現状では5割以下だ。
ただし、木内氏はこう述べている。
「しかし、15日のFOMC当日までに金融市場が0.75%の利上げを完全に織り込むことになれば、市場の期待に引きずられる形でFRBは0.75%の利上げを決める可能性が高まるだろう。市場の期待が自己実現的に、FRBを0.75%の利上げへと導くのである」
「0.75%の利上げ」におびえて株価が暴落した金融市場だが、その下落によって0.75%の利上げを織り込めば、FRBは市場の望みどおりに0.75%の利上げに踏み切りだろう、という皮肉である。
(福田和郎)