今後のネックはやはり原材料価格上昇、価格転嫁できるか?
今後の業績を見るうえで、引き続く原材料価格の上昇を受け、価格転嫁がどうなるかが大きなポイントになるだろう。
日鉄の橋本社長は5月10日の決算発表記者会見で、「海外に比べてもまだ値段は安い」と、今後も値上げを求める考えを強調。JFEの寺畑雅史副社長も、平均で1トンあたり約3万円の上げを求めていることを表明した。
トヨタなど大手との「ボス交」で決まる「ひも付き」価格とは違い、一般に流通する「店売り」の価格は、足元では堅調。部品供給の混乱で生産が落ち込む自動車向けなど、鉄鋼の需要は低迷するものの、鉄鋼メーカーの生産調整が効いているという。
ただ、価格交渉が今後も順調にいくかは不透明だ。鋼材づくりに使う石炭価格は前年から5倍程度に跳ね上がっているが、ユーザー側もあらゆる原材料の値上がりで四苦八苦しており、鉄鋼の値上げ交渉がすんなり進む保証はない。
需要の減退も心配だ。部品不足で落ち込む自動車生産の回復のめどは立っておらず、日鉄は、改修していた名古屋製鉄所(愛知県東海市)の第3高炉の稼働(6月中予定)を延期することにした。ロシアによるウクライナ侵攻、円安の一段の進行など景気の先行き不安材料も多い。
こうした状況を踏まえ、23年3月期の業績見通しについて、神戸製鋼は前期比微減の600億円の純利益を見込むが、日鉄とJFEは「合理的な算定を行うことが困難な状況」などとして、明らかにしていない。
需要、価格の両面で、大手鉄鋼各社の業績はなかなか先を見通せない状況が続く。(ジャーナリスト 済田経夫)