論理思考は「論理力×想像力×知識」で決まる
白木さんは、思考力として「論理力」と「想像力」の2つが重要だ、と説明する。さらに、ケース問題の例からわかるように、さまざまな社会事象について、ある程度の知識があると解答しやすい。知識の量を増やすことも大切だ。そして、以下の結論を導いている。
論理思考は「論理力×想像力×知識」で決まる
この後、「日本にある携帯電話の台数は?」「アフリカの航空会社による自然公園事業の可否は?」などの例題に基づき、論理思考の実際を学ぶ。「仮説思考」「構造化」などがキーワードとなる。
最後に、日常の出来事から知識を抽出するための工夫について紹介している。たとえば、近所のフィットネスクラブで、入会を検討するために見学した際、「平日昼間利用限定:月8000円」という価格表を見たら、「なぜ、平日昼だけ利用可能なプランは、安い価格設定なのか?」と疑問を持つようにする。つまり、何気なく目に入った情報にも関心を向ける習慣を持てば、知識を得る機会が増えるのだ。
また、知識を得るには、考えるだけでなく、行動に移すことは大切だという。たとえば、週末のオフィス街で、ガラガラの飲食店で食事をする機会があったら、「週末で人通りも少ないのに、なぜお店を開けているのか(休みにしないのか)、店長さんに質問」する。
そうして蓄積した知識があれば、小売業では「すいている時間帯の集客」が課題になりやすいことが分かるという。「知識を関連づけしておくと、筋の良い仮説を立てやすくなる」と解説している。
本書のサブタイトルは「ケース問題で『広い視野』『深い思考』をいっきに鍛える」。こんな問題も出ている。「とある大手乳製品メーカーA社が、乳幼児用の粉ミルク事業の売上を向上させるには?」という問いに対して、「高付加価値・高価格のプレミアム商品を開発」という解答はNGだ。理由は本書で確認していただきたい。
こうした問題で論理思考を鍛えれば、コンサルティングファームに採用されやすいのもうなずける。クイズでどうでもいい知識を溜め込むばかりが、東大生ではないのだ。
(渡辺淳悦)
「東大ケーススタディ研究会 伝説の『論理思考』講座」
東大ケーススタディ研究会編、白木湊著
東洋経済新報社
1980円(税込)