企画書は「出すもの」ではなく「通すもの」
人間関係編で、「なるほど」と思ったのは、「褒める」は最強のビジネススキルということだ。
コストがかからず、相手も喜ぶ。いいことずくめだ。ただ、「褒めるというクセは、使わないとすぐに衰える筋肉のようなもの」と注意を促している。だから、褒めることを習慣にしないと、いざという時に出てこない。
会社に「友だち」はいらない、という言葉にはドキっとした。
会社はあくまでも働く場であり、それ以上でも以下でもない、と戒めている。優先すべきは「仲良くなること」ではなく、「いい仕事をすること」だ。
佐久間さんはタレントやマネジャー、同僚と飲みに行くことはほとんどないという。その時間で、勉強したり、やりたい仕事の準備をしたりする。
ただし、会社の外に、損得勘定抜きで付き合える人間関係を持っておくことが肝要だ。学生時代の友だちでも趣味の友だちでもいい。そうした存在が心のセーフティーネットになるという。
企画術編では「企画書は『ラブレター』」というのも心に残った。
企画書は「出すもの」ではなく「通すもの」だと強調している。その企画書は、誰が読むのかを意識する。そして、相手は何を求めているかを察知し、数字やデータ、ロジックで裏打ちした説得力あるものを提出する。若い頃はラブレターのように何度も企画書を書き直したという。
25歳のとき、初めて通ったA4用紙2枚の企画書を公開している。「泣いて、カリフォルニア」というタイトルの番組企画書で、後に「ナミダメ」というタイトルで実現した。
◆メンタル「第一」、「仕事」は第二
最後に、メンタル編から。メンタル「第一」、「仕事」は第二。「心を壊してまでやるべき仕事なんてどこにもない」と書いている。仕事なんて、「たかが仕事」とタカを括ることも大切だ。
佐久間さんは、「仮説検証をはじめ、僕が身につけた作戦の数々を盛り込んだので、入社したばかりの方や、責任が重くなって岐路にいる方、やりたいことが見つからない方など、いろいろな人の役に、少しでも立てたらいいなと思います」と語っている。
ちょうど、雑誌「プレジデント」(2022年6月17日号)が「報われる努力、ムダな努力」という特集を組んでいた。どこか佐久間さんの発想に近いものを感じた。本書はタイトルに「ずるい」と銘打っているが、実は用意周到に準備された、まっとうな努力が陰にあることがわかる。
努力が報われるためには、賢い戦略が必要なのだ。
(渡辺淳悦)
「ずるい仕事術」
佐久間宣行著
ダイヤモンド社
1650円(税込)