まずは「イヤじゃない仕事」に就くこと大事 元大学教授が書いた「リアルすぎるFIRE」本

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お金(収入源)を二つに切り分ける

   本書では、不動産投資よりも利回りが高く、小回りが利く株式投資を勧めている。詳しい投資法は本書を読んでいただきたいが、基本的な考え方だけを紹介しよう。

   大事なのは、「お金(収入源)を二つに切り分ける」ことだという。「労働所得」と「資産所得」だ。「労働所得」は9割を「消費」に充てて、1割を「貯蓄」に充てる。「資産所得」は10割を「貯蓄」に充てる。原則的に「消費」には充てない。

   投資資金総額が3000万円を超えたあたりからは、投資資金自体の「複利の力」による増殖力が強大になるので、もう貯蓄による追加資金投入はしなくてもよくなるという。

   本書には「なるほど」と思った名言がいくつもある。少しだけ引用しよう。

・「額面上は無リスク」の定期預金にお金を寝かせておくことは、まさに「リスクをまったく取らないことこそがリスクである」ということの典型的な例
・「勉強する」ということは最大のリスクヘッジである
・副業の目標は「毎月10万円」
・暇(ヒマ)がありすぎるのもストレスだ。完全に無職になるのではなく、「イヤじゃない副業」は残しておく

   評者は60歳をいくつか過ぎたばかりだが、同級生やかつての同僚を見て、実に千差万別な「老後」を送っていることに気が付き、愕然としたことがある。

   上場企業のファウンダーとして資産数十億円を築き、60歳直前でリタイア。各地に別荘を持ち、しょっちゅう夫婦で海外クルーズ旅行を楽しんでいる者もいれば、ほとんど預貯金もなく第三の職場であくせく働いている者もいる。高校の同級生だった2人は、どこで差が付いたのか。

   経済的には両極端のポジションにいる2人だが、難関大学を出て、社会的にはそれぞれ著名な企業で働き、しかるべき地位にいたから、50代の頃、「格差」は顕在化していなかった。はっきり違いが見えてきたのは60歳を過ぎてからだ。

   金銭感覚の違いだけでは説明できないものがあると思っていたが、本書を読み、理由が分かった。

   前者は若い頃から老後を見据え、経済的自由を手に入れることを明確に目的としていたのに対し、後者は「なんとかなるだろう」と考え、蓄財をしてこなかったという。誰もがうらやむ職業に就き、思う存分仕事をしてきた人の頭の中には「老後」の二文字はなかったのだ。

   「好きな仕事」に就いた代償は大きかった、と言えるかもしれない。せめて40代で彼がこの本と出会っていれば、と老婆心ながら思った。

   今はやりの「FIRE」本とは一線を画す「リアルすぎるFIRE」本だ。30代から40代の人にこそ読んでもらいたい。今から動けば、確実に60歳までには「お金の自由」を手に入れることができるだろう。巻末には、安全・堅実な投資先リストが付いている。

(渡辺淳悦)

「60歳までに『お金の自由』を手に入れる!」
榊原正幸著
PHP研究所
1067円(税込)

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