「東芝」経営再建、投資家から8件の「非上場化」提案...このまま買収の方向で進むのか? 今後を左右する3つの「論点」とは

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官民ファンド「産業革新投資機構」(JIC)の動向がカギ

   今後の作業を展望すると、大きく、3つのポイントがある。

   まず、東芝の経営陣の顔ぶれだ。6月28日の株主総会に諮られる会社提案の取締役候補13人の中で、社内出身者は島田太郎社長ら2人だけで、残り11人は社外取締役。

   すでに株主推薦というかたちで海外ファンド出身者がおり、再任候補6人のうち4人は米投資ファンドのファラロン・キャピタル・マネジメントなどの推薦で就任したとされる。さらに新任候補の2人も、ファンド関係者といわれる。もし、会社提案通りに全員が選任されれば、全取締役13人中6人がファンドの関係者ということになる。

   この新任候補2人について、社外取締役の綿引万里子氏(元名古屋高裁長官)が「株主(ファンド)出身の取締役が増えると公平性を欠く」と反対を表明する異例の事態になっている。

   株主総会後の役員構成がどのようになるか、それが提案を審査する際に、どう作用するか。いまでも、東芝社内では非上場化に慎重な意見が根強いが、物言う株主は積極的とされ、役員間の議論が紛糾する可能性もある。

   2つ目のポイントは改正外為法の規制だ。東芝のように、原発や防衛関連事業など日本の安全保障に重要な事業を抱える企業の買収(株式取得)は、外為法に基づく政府審査の対象になる。

   萩生田光一経済産業相は、6月3日の閣議後の記者会見で、「東芝は原子力や半導体など国家の安全保障に関わる重要技術を保有する企業で、関係する事業が維持・発展していくことが重要だ」として、厳格に審査する考えを強調した。こうなると、海外勢だけの買収はかなり難しいと見られている。

   3つ目が株価だ。東芝株は2021年4月、英投資ファンドの買収構想で、3800円台から4500円レベルに急騰し、直近では春先の4000円程度から、非上場化=買収の可能性が高まるにつれて上昇基調をたどり、足下で6000円目前になっている。

   現在の株式時価総額は2兆5000億円程度で、プレミアムを上乗せし、買収には概ね3兆円の資金が必要とみられるが、「今の株価は高すぎる」(証券市場関係者)との声もある。

   そんな中、最大約3兆円の資金力を持ち、政府の後ろ盾もあるJICの登場を受け、「資金、外為法規制の両面で有力になり得る」(経産省関係者)との声が政府内でも出ている。複雑な要素が絡み、利害関係が錯綜するなかで先行きは見通せないが、JICの動向がカギを握ることになりそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)

<東芝年表>
2015年 4月 不正会計が発覚
2016年12月 米原発事業での巨額損失を公表
2017年12月 6000億円の第三者割当増資
2020年 1月 子会社で不正会計が発覚
2021年 4月 英投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズによる買収提案が判明/車谷暢昭社長辞任、綱川智会長が社長に復帰/CVCが買収提案を事実上撤回
2021年 6月 20年の株主総会の運営が不公正だったとの調査報告書公表/株主総会で永山治・取締役会議長らの取締役再任否決
2021年11月 会社を3分割する方針を公表
2022年 2月 3分割計画を2分割に修正
2022年 3月 綱川智社長が事実上引責辞任、島田太郎氏が後任に就任/臨時株主総会で2分割計画否決
2022年 5月 再建計画の提案締め切り
2022年 6月28日 定時株主総会(予定)

<J-CASTニュース バックナンバー>
いばらの道続く「東芝」経営再建の行方 「2分割」「非上場化」否決...またも戦略練り直し急務(2022年4月3日付)
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