「後継者独自の戦略を黙って見守る覚悟がないならやめたほうが...」
「自社の将来を考えて、血縁ではない者を後継者に据えたい」と相談してくるワンマン経営者に対しては、「交代後の一時的な業績の低迷や、後継者独自の戦略を黙って見守る覚悟がないならやめたほうがいい」とお話しすることにしています(自社に対する執着心が薄い経営者の場合は、この限りではありませんが)。
結果、近年では、血縁者に適任者がない場合にどうしたら最も従業員に迷惑を掛けないだろうかと考えて、最終的にM&Aで他人に経営を引き渡すという選択をされた経営者もいます。
非常に賢明な選択だと思いました。人手に渡ってしまえば文句も言えなくなるわけで、相手をしっかり吟味した上で選ぶのなら、ある意味それが一番正しい選択にも思えるところです。
さて、永守氏。氏にはご子息が2人いるのですが、氏自身が自社経営の世襲を好ましくないとして、ご子息はそれぞれ違った道を歩んでいます。
世襲を禁止するのなら、血縁者ではない後継者に対してももっと我慢強くならなければ、結局、自身が口出しできなくなるほど体力的に弱ってしまうまで同じことの繰り返しになってしまうのではないかと、先行きが不安になってしまいます。
M&Aで次々会社を買収して自社と一体にすることが得意な永守氏も、自社の経営を他人に引き継ぐことは苦手だったということになるのかもしれません。
ソフトバンクの孫正義氏やユニクロの柳井正氏などもまた、同じお悩みをお持ちのように見受けられます。後継者問題は成功を重ねてきたカリスマ経営者にとって、最後でかつ最大の経営課題であると言っていいかもしれません。
(大関暁夫)