「昭和」を捨てよう! 日本再生へ、これからの時代どんな「心構え」が必要か?

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   2025年は3年後である。どんな年かと思ったら、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になる年だそうだ。昭和を牽引してきた世代がいよいよ「引退」する。

   本書「2025年日本経済再生戦略」(SBクリエイティブ)は、元日本マイクロソフト代表取締役社長の成毛眞さんと経営共創基盤(IGPI)グループ会長の冨山和彦さんが、日本再興のための具体的なロードマップを示した本である。読めば元気が出る「希望の書」として、勧めたい。

「2025年日本経済再生戦略」(成毛眞・冨山和彦著)SBクリエイティブ

   対談をまとめた本かと思ったら、そうではなかった。「日本経済再生戦略-イノベーションで革命を起こせ」などのテーマごとに、2人の提言がそれぞれ並ぶかっこうになっている。「若者は上場企業よりユニコーンを目指せ」(成毛)、「1960年生まれのリーダーは昭和にとどめを刺せ」(冨山)という具合だ。

   通して読むと、底流には昭和世代への憎悪、諦めといった感情があるようだ。だから、冒頭に、団塊の世代の話が出てくる。会社的には引退する年齢だが、政治の世界ではまだまだ現役だ。

   成毛さんは「日本の政治も行政も、そして大企業も昭和のレガシーを引きずり、保身に毒されたままなのだ。彼らがいくら、『何とかなる』という楽観論、『何とかする』という根性論を掲げても、それで国がよくなるはずがない」と断言する。

「官製内需頼みが日本経済低迷の原因」

   昭和の価値観を引きずっている政府は、日本経済再生の先導役にはなりえない。だから、100%自己責任の意識で、個人として人生を構築すべきだ、と成毛さんは呼び掛けている。

   その前提として、日本経済の構造的な問題を指摘している。「中小企業の70%が国内消費依存、GDPに占める個人消費の割合は50%強にも上る。官製内需頼みが日本経済低迷の原因なのだ」と説明する。

   こうなったのは、日本政府が中小企業や地方自治体に莫大なカネを長年にわたってばらまいてきたからだ。海外からの所得移転なしに、政府がつくり出した内需でしか食えない中小企業が7割を占めていることこそが問題なのだという。

   冨山さんも、これに同意。建設業界、電力業界、原子力産業をはじめ、日本の多くの企業や地方自治体が、歴代の自民党政権が築き上げた「まかないの仕組み」に組み込まれており、産業構造が変化しても、柔軟に変化できないと指摘する。

   コロナ禍でも企業倒産件数が史上最低水準で推移している日本は、「逆に危ない」という。いろいろなかたちで企業には巨額の資金が政府から流れており、キャッシュが回っている限り、どんなに大赤字になっても企業はつぶれず、ゾンビ化して生き延びるのだ。

   冨山さんは、20年前の金融危機に際し、産業再生機構を率いた経験をもとに、「政府が救うべきはゾンビ企業ではなく、稼ぐ力が残っている事業であり、そこで働く人間なのだ」と書いている。

   冨山さんもまた、「昭和」批判を展開している。

「政府であれ、大企業であれ、日本の古典的なエスタブリッシュメント組織の体質をひとことで言うなら『グダグダ』であるということだ。すべてが固定的で旧時代的。何かというと『ことなかれ』の保身に走る。悪しき『昭和』である」
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