ロシア、ウクライナ、ベラルーシへの融資が不良債権に
梶谷氏によると、もともと「一帯一路」は、通貨の元高を背景に拡大してきた国内の過剰な資本を海外に「逃がし」、供給能力の過剰を緩和する意味を持っていた。対外援助を通じて海外の新興国が経済成長すれば、中国国内の過剰な生産能力に対する市場が拡大することにもつながる。しかし、トランプ政権の成立以降、元安傾向が続き、前提が揺らいだ。そこに、ウクライナ戦争の打撃が加わった。
梶谷氏は国際金融専門家の論考をもとに、こう述べている。
「一帯一路に代表される中国の海外投資ブームが、ロシアとウクライナの戦争により深刻な障害にぶつかるだろう。(中略)その根拠となるのは、中国の政府系金融機関がロシアとウクライナ、およびベラルーシに対して行っている融資額の大きさだ」
ロシアには累積1250億ドル以上、ウクライナにも70億ドル程度、ベラルーシに80億ドル程度融資してきた。3カ国を合わせると、過去20年間の中国の海外向け融資の20%近くを占める。ほかにも、中国の対外貸付のうち、債務危機にある借入国に対する比率は、2010年の約5%から現在では60%にまで増加したと指摘。
「中国の政府系金融機関は、今後ロシアなどに対する融資が不良債権化するリスクを、よりリスクの高い債務国への新規融資の停止あるいは債権回収によって埋め合わせるかもしれない。(中略)中国が新興国に対する気前のよい資金供給者の役割から撤退するならば、そのあとにどのようにしてそれらの国々の持続的な経済成長を支えていけばよいのか。(中略)ウクライナ危機は、国際社会に対してこのような問いを突き付けていることを忘れてはならない」