やっと上海市のロックダウン(都市封鎖)を解除したとはいえ、中国経済の急減速はなかなか収まらない。
厳格な「ゼロコロナ政策」の影響とともに、ロシアのウクライナ侵攻によって中国が進めている経済政策「一帯一路」が大きな打撃を受けている、と指摘する専門家もいる。一方で「漁夫の利」を得るのではないか、という見方もある。
いったい、ウクライナ戦争は中国にとって、「凶」なのか「吉」なのか。
ウクライナ戦争で中国の「一帯一路」が危機に
「一帯一路」とは、かつて中国と欧州を結んだシルクロードを模した、広域経済圏構想だ。中央アジア経由の陸路「シルクロード経済ベルト」(一帯)と、インド洋経由の海路「21世紀海上シルクロード」(一路)の2ルートで、鉄道や港湾などインフラの整備を進める雄大なプロジェクトだ。
一帯一路につながる途上国は、中国の資本援助で自国の経済発展が促されると期待するし、先進国は自国企業のプロジェクト参入を狙う。中国の覇権主義だと懸念する声も強く、各国間に温度差がある。
ウクライナは、陸路の中間地帯にある。現在、ウクライナを経由する便が運行停止になっているが、中国と欧州を結ぶ国際貨物列車「中国名:中欧班列/英語名:トランス=ユーラシア・ロジスティクス」がロシアとウクライナを通過している。
ウクライナ情勢悪化によって「一帯一路」が危機に瀕している、と指摘するのは日本経済団体連合会(経団連)のシンクタンク「21世紀政策研究所」研究委員の梶谷懐・神戸大学大学院教授だ。
梶谷氏は経団連の機関紙「週刊経団連タイムス」(5月26日付)にリポート「ウクライナ危機は一帯一路の終焉をもたらすか 」を発表した。これまではウクライナからの穀物輸入や、ロシアへの経済支援に関する影響が懸念されてきたが、梶谷氏は「長期的には、一帯一路政策に代表される中国の対外投資政策のあり方を大きく変える可能性がある」と指摘する。