「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。
経営統合、構造転換...銀行の実像に迫る
「週刊東洋経済」(2022年6月11日号)の特集は、「瀬戸際の銀行」。預金や貸し出しなどの本業がジリ貧に陥る中で、銀行のあり方が問われている。経営統合や事業の大胆な構造転換で生き残りを図ろうとする、銀行の実像に迫っている。
東北から九州まで地方銀行の再編ドミノが加速している。各地の動きを追った列島縦断のルポが充実している。
東北では、青森県の青森銀行とみちのく銀行が2022年4月、経営統合し共同持ち株会社プロクレアホールディングス(HD)が発足した。両行は25年1月をメドに合併する計画で、独占禁止法特例法の適用事例第1号となった。
この統合が、東北の地銀再編に火をつける可能性がある、と指摘している。青森銀行・秋田銀行・岩手銀行の北東北大連合の可能性に注目。この3行は、ATMの相互開放など多分野で20年以上連携している。
21年には秋田銀と岩手銀が包括業務提携「秋田・岩手アライアンス」を結んだ。青森銀とみちのく銀が合併すれば、規模ではトップに躍り出るため、将来統合する際に上下の関係にならないよう、2行の関係を近づけているという見立てを紹介している。
東北では荘内銀行(山形県鶴岡市)と北都銀行(秋田市)を傘下に持つフィディアホールディングス(HD)と東北銀行(盛岡市)が経営統合で基本合意したにもかかわらず、22年2月、東北銀行が合意を解消した。この「破談」の背景に、みずほ銀行の影が見えた、とその内情を書いている。
また、関東では横浜銀行と同じコンコルディアファイナンシャルグループ傘下の東日本銀行(東京都)の合併が選択肢としてあり、もう1つのシナリオとして、きらぼし銀行(東京都)と東日本銀の合併もあるという。
◆東海・甲信越、九州の動きは?
東海・甲信越では、22年5月、愛知銀行と中京銀行が「愛知県ナンバーワンの金融グループをめざす」と会見、合併に向けて動き出した。
念頭にあったのは県内トップの名古屋銀行だ。「愛知・中京」の2位・3位連合が誕生すれば貸出残高は4兆円を超え、名古屋銀を追い抜く。危機感を感じた名古屋銀は地銀上位行の静岡銀行と包括業務提携を結ぶことを発表、これを牽制したという。
九州では、3つある公的資金注入行の行方が注目されている。鹿児島県を地盤とする南日本銀行と宮崎県を地盤とする宮﨑太陽銀行の2行が、資本増強の方針を示した。
最大の割当先となったのは、それぞれ鹿児島銀行と宮崎銀行だった。「地域のトップバンクが第二地銀を支える体制が、九州南部で相次ぎでき上った」と見ている。
雨後のたけのこのように出てきた地銀連携――。あまり内実は伴っていないようだ。「殿様気質が抜けず、提携でお茶を濁している間に再編のうねりが大きくなり、実は孤立し始めていることに、はたして気づいているのだろうか」と同誌は厳しく論評している。
人気の保険は? 保険最新最強ランキング
「週刊ダイヤモンド」(2022年6月11日号)は、「保険最新最強ランキング」を特集している。保険のプロ28人による、生保商品ランキングを掲載している。
主戦場の「医療保険」で首位に躍り出たのは、住友生命保険参加であるメディケア生命保険の「新メディフィットA(エース)」だ。
8年ぶりに大改定を行った商品で、割安ながら各社商品のいいとこ取りをして、かつ保障内容も上回るという、死角のなさが支持を集めた。
特約は12種類を用意し、あらゆる病気やけがのリスクに備えられる。さらに要介護2以上で一時金を受け取る介護保障付終身保険特約で介護にも備えられる。
2位は、昨年4月に発売されたメットライフ生命保険の新商品、「My Flex(マイ フレキシィ)」だ。
主契約の入院保障は、入院日数連動型と短期入院一時金型に加え、新たに入院一時金型を設けることで3つの契約形態から選べるようにした。特約も通算支払い日数の限度が無制限のガン通院充実特約、在宅医療特約など充実している。
がん保険の種類は、保障内容で2つに大別される。何にでも使える多額の一時金タイプと、治療法に合わせて保障するタイプだ。SOMPOひまわり生命保険の「勇気のお守り」は昨年10月に登場した新商品だがトップになった。
この商品は2つの保障タイプの両にらみで、主契約で治療給付型か一時金型のいずれかを選択できる。特筆すべきは、保障免責期間(3カ月)の保険料なしという業界初の試み。また、非喫煙者は割安の保険料で加入できるほか、「がんリスク検査サービス」(有料)など付帯サービスも充実している。
続く2位はFWD生命保険の「FWDがんベスト・ゴールド」だ。こちらは一時金タイプで、初めてがんと診断されたら、最高300万円の診断一時金が出る。支払い回数は1年に1回を限度に回数無制限。2回目以降は、通院でも一時金が支払われると手厚い。
◆「顧客思い」の生命保険会社ランキングに注目
「顧客思い」の生命保険会社ランキングにも注目だ。
1位になったのはメットライフ生命保険で、3年連続の首位。「保障性商品だけでなく、低金利を見越して早くから外貨建て商品へ移行した資産性商品まで、幅広い商品を開発している」という評価だ。さらに、電話で健康相談ができる付帯サービスを評価する声も多かった。
2位にはSOMPOひまわり生命保険、3位はオリックス生命保険、4位はチューリッヒ生命保険、5位はFWD生命保険が入った。
反対に、「顧客本位ではない生命保険会社ランキング」には、1位にかんぽ生命が挙がった。知名度ではなく、商品本位で生命保険を選ぶことが大切なようだ。
生命保険会社だけでなく、損害保険会社にも言及している。東京海上日動火災保険グループのイーデザイン損保の新商品が半年間、実質棚上げされていたという記事には驚いた。
本格的にDX(デジタルトランスフォーメーション)を実践したと評判の商品だが、従来の東京海上日動のドライブレコーダー付き自動車保険とバッティングするのではと、プロモーションが行われなかったというのだ。
なお、東京海上日動OB(20~30歳代)による覆面座談会では、「出世したいなら、偏差値65の金太郎飴になれ」と、とにかくミスを恐れる社風を揶揄している。なかには、難関大学を出て入社しても数年後には退職し、コンサルへ転職する人も少なくないらしい。しかし、「営業現場や損害サービスの現場で得られたスキルや経験は、ほとんど生かせません」(30代後半OB)との声も出ていた。
EVで日本が大逆襲
「週刊エコノミスト」(2022年6月14日号)の特集は、「EV日本の大逆襲」。日産と三菱自動車がこのほど「130万円台の軽」EVを発表。今年は、日本の「EV元年」と位置付けている。
電気自動車の分野で欧米や中国に押されていた日本が、「ついに反撃ののろしを上げた」と勇ましい。日産が発表した「サクラ」は三菱自動車との共同開発。満充電で180キロを走ることが可能だ。
注目されるのは、その値段。販売価格は233万円からだが、国の電動車の補助金(55万円)を使えば、180万円弱。さらに、自治体の補助金(東京都で45万円)を使えば、133万円と、ガソリンエンジンの自動車とほぼ同じ値段で買える。
三菱自動車も姉妹車「ekクロスEV」を発表。両車は、この夏から発売を開始する。2社を合わせた年間の生産目標は6万台だ。
21年の新車販売台数に占めるEVの比率は欧州が17%、中国が16%、米国が4.5%であるのに対し、日本は0.9%と著しく低い。
しかし、自動車の販売台数で日本は世界3位であり、潜在的な市場は大きい。韓国の現代自動車は一度撤退した日本市場にEVと燃料電池車(FCV)2車種のオンライン販売で再参入する。
ホンダやヤマハ発動機など日本勢が圧倒的なシェアを持つ世界の二輪市場。二輪車の交換式バッテリーで、日本は世界に先行しているという。
EVで日本は出遅れているとばかり思っていたが、勝機はまだあるようだ。
(渡辺淳悦)