関西ペイント株11%高、アフリカ撤退を好感 今後の海外事業、インドや欧州法人向けに注力

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   塗料大手、関西ペイントの株価が2022年6月2日の東京株式市場で一時、前日終値比185円(11.4%)高の1813円まで急伸した。前日取引終了後に不振が続いたアフリカ事業からの撤退を発表しており、業績改善期待が高まった。

  • 関西ペイント株に注目
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株式譲渡益は自己株式取得に充てる方針

   関西ペイントは、日本の塗料業界では日本ペイントホールディングス(HD)とともに「両トップメーカー」という位置づけだ。両社ともに海外展開を幅広く進めており、関西ペイントの2022年3月期の日本事業の売上高は全体の33%に過ぎない。

   ちなみに、日本ペイントHDは元三菱UFJフィナンシャル・グループ副社長の田中正明氏がスカウトされて2019年3月~2021年4月に経営トップを務めていた。

   関西ペイントの発表内容を確認しておこう。アフリカの2子会社の保有株式をすべてオランダの塗料大手、アクゾ・ノーベルに計4億5000万ドル(約585億円)で売却する。株式譲渡実行日は未定だが、規制当局の認可などを経て2023年中を見込む。実際の譲渡価格は多少、変動する可能性がある。

   アフリカ事業が2022年3月期の全体の売上高、経常利益に占める割合はそれぞれ9%、4%程度だった。株式譲渡益は関西ペイントの自己株式取得に充てる方針であり、この点も株価上昇に一役買ったようだ。

証券会社「ポジティブな印象」も、原油・原料価格の高騰どう響くか?

   関西ペイントは2010年に、南アフリカの塗料最大手を買収してアフリカに進出したものの、21年3月期まで6期連続で経常赤字が続いた。近年は拠点集約など効率化を進め、22年3月期に経常黒字に転じた。黒字化し、価値を高めたタイミングで売却することになる。

   ただ、経常黒字化したものの経常利益率は3.9%で、全社ベースの9.0%には遠く及ばなかった。今後の海外事業は、スズキの現地子会社向けが強いインドや欧州の法人向け事業に注力する。

   SMBC日興証券は6月2日配信のリポートで「ポジティブな印象」と評価した。モルガン・スタンレーMUFG証券は同じ日付で、関西ペイントの投資判断を3段階で最上位の「オーバーウエート」に1段階格上げし、目標株価も2000円から2200円に引き上げた。

   株式市場は歓迎しているが、関西ペイントがウクライナ情勢などを受けた原油価格や原料価格の高騰という難題を抱えていることは、他の多くのメーカーなどと違いはない。また、注力するとしている欧州の景気が、今後低迷することも予想される。

   コスト上昇分の販売価格への転嫁の進展度合いなどによっては、株価に影響する可能性もありそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)

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