消防団員数の減少が著しい。存続を危ぶむ消防庁では、消防団員の処遇の改善に乗り出している。その一つが報酬等の引き上げだ。果たして、団員数の減少に歯止めはかかるのだろうか。
退団者が入団者を1万人以上上回る状況続く
公的な消防組織であり、国の所管する「消防庁」、各地方自治体が所管する「消防本部・消防署」に対して、「消防団」は自治体により認定された「いわば自衛団」であり、ボランティアのような存在だ。
消防署が常設の消防機関であり、消防吏員(消防官・消防士)は消防学校を卒業した地方公務員であるのに対して、「消防団員」は普段は別の仕事をしている住民が消防活動を行う。
しかしながら、とくに地方の僻地・過疎地を中心に、消防署が設置されていない地域では、消防団は消防活動において重要で、中心的な役割を担ってきた。
だが、団員の高齢化に加え、少子化・人口減少により、消防団員は減少の一途を辿っている。
消防庁の調査によると、消防団員は1950年代前半には200万人以上いた。しかし、1956年に200万人を割り込むとその後も減少は止まらず、1990年には100万人、2007年には90万人を割り込んだ。
5000以上あった消防団も1957年には5000を割り込み、1961年には4000、2004年には3000を割り込んだ=表1。
直近10年間でも累計で約56万人が退団し、年間5万人以上が退団するなど、退団者数の高止まり続いている。
半面、入団者数は年々減少している。とくに、ここ3~4年は毎年、退団者数が入団者数を1万人以上上回る状態が続いている=表2。
年齢階層別では、20歳代、30歳代の団員構成率が減少しており、30歳代以下は4割程度(41.5%)にとどまる。
そこで、団員数増加へと白羽の矢が当たったのが、女性と学生だ。
女性団員は、着実に増加している。1990年に1923人だった女性団員は、2021年度には2万7317人にまで増加した。女性団員のいる消防団の割合も、75.9%にまで増加している。
一方、学生団員の獲得では、2014年11月から「学生消防団活動認証制度」が開始された。同制度は、消防団員として活動した学生に対し、市町村長が「学生消防団活動認証証明書」を交付するもので、証明書は就職活動の自己PRなどで活用できる。
同制度により学生を消防団に取り込もうという作戦だが、2021年度の団員数は5387人、導入市町村数は333にとどまっている=表3。
その結果、女性団員と学生団員が増加しても、消防団員の減少をカバーすることはできていないのが実情だ。
2022年4月から、団員の年額報酬は標準額3万6500円に
そこでさらなる「切り札」として考えられたのが、「消防団員の処遇」の向上だった。
2021年4月13日、総務省「消防団員の処遇等に関する検討会」の中間報告書をまとめ、これを踏まえ、消防団員の報酬等の基準について、消防庁長官が都道府県知事及び指定都市市長に対して通知を行った。
消防団はボランティアのような存在と前述したが、消防団員は「非常勤特別職地方公務員」という準公務員と位置付けられている。このため、その活動については、出動手当、年額報酬などの報酬が支払われている。
消防庁長官の通知では、出動手当を「1日7時間45分を基本とし、予備自衛官等の他の類似制度を踏まえ、8000円を標準的な額とすること」とし、年額報酬は「予備自衛官を参考としつつ、団員階級の者については年額3万6500円を標準的な額とし、団員より上位の階級にある者等については、市町村において、業務の負荷や職責等を勘案して均衡のとれた額となるよう定めること」とした。
この基準は2022年4月1日から適用された。その結果、年額報酬3万6500円以上とした消防団数は2020年度の492団体から1188団体に増加し、全体1720団体の69.1%となった。
また、支給の対象業務、方法、金額がバラバラだった出動報酬は、8000円以上とした団数は1113団体となり、全体の64.7%となった。
消防団員が実際には年に1度も消火活動を行うこともなく、それでも年額報酬や訓練に出動手当が支払われることに批判的な見方もあるだろう。
しかし、消防団が重要な責務を担っている地域があることは確かだ。
本当に消防団が必要な地域で団員が十分に確保でき、十分な活動が行えるように、引き続き、処遇だけの問題ではなく、消防団のあり方を考えていく必要があるだろう。