円安を加速させる4つの理由
野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏も、「悪い円安」の加速に危機感をつのらせる。
木内氏のリポート「再燃する円安進行と悪い円安への警戒」(6月6日)では、ますます円安進行に拍車をかける条件を列挙している。ポイントをまとめると、このようになる。
(1)FRBが9月まで4回連続で0.5%幅の利上げが行うとの期待が市場に織り込まれつつあり、これが足元での長期金利の上昇とドル高につながっている。
(2)EUのロシア産原油の輸入禁止措置で、原油価格が一段の上昇し、米国での物価上昇率の低下を遅らせ、FRBの急速な利上げを後押しする。
(3)欧州中央銀行(ECB)が7月には利上げする見込みで、ユーロ高傾向がみられる。ユーロ円は140円台と最高値を更新中だ。円はドルばかりでなく、ユーロに対しても下振れており、円全面安の様相を呈している。
(4)さらに6月6日、日銀の黒田総裁が、金融緩和を修正する考えがないことを改めて強調。一段と円安を加速させる結果につながった。
結局、円安に歯止めがかかるのはいつになるのか。
木内氏は「9月あたりに環境が許せば、FRBは利上げのペースを調整することが見込まれる。それは米国の長期金利の上昇と円安ドル高の流れに歯止めを掛ける可能性があるだろう」という。だが、それまでは円安のさらなる進行、原油価格の一段の上昇と相まって物価上昇率を押し上げる可能性が高い、と見ている。そして、こう結んでいる。
「その結果、物価高を促す悪い円安を助長しているとして、日本銀行の円安容認姿勢、金融緩和堅持の姿勢は政府や企業、国民から一段と強い批判を浴びるリスクが残されているのではないか」
(福田和郎)