6月に入り、早くもお中元商戦が本格化してきた。新型コロナウイルス禍やウクライナ戦争などの影響で食品の値上げラッシュが続き、「値上げの夏」となる2022年は、油や調味料など普段よく使う食品をアピールする動きが目立っている。
また、コロナ禍でオンラインの活用が広がっているのを受け、相手の住所を知らなくてもギフトを贈れるサービスを始める百貨店も出てきた。
原材料価格高騰で「実用的ギフトがお薦め」
「今贈るなら実用的ギフトがお薦め」と呼びかけるのは、老舗百貨店の松屋だ。小麦をはじめ穀物などの原材料価格が高騰しており、2022年6~7月で3000品目を超える商品が値上げされると伝えられている。松屋は「今後はさらなる値上げの可能性もあり、今が狙い目」として、バターやしょうゆ、オイルなどをPRする。
同社の21年のお中元商戦は、オンラインストアの活用が前年比で2倍に達したといい、EC(電子商取引)対策もさらに強化。オンラインストア限定で一部商品の送料を無料にしたり、購入した際につくポイントの付与を5倍に増やしたりと、手厚いサービスで客を引きつけようと意気込む。
一方では、最近、オンラインでつながっている友人や知人らの住所を知らないというケースが増えている。そこで、三越伊勢丹は、無料通信アプリ「LINE(ライン)」などのSNSやメールでギフトが贈れる「ソーシャルギフト」を始めた。
相手にわざわざ住所を聞いて気を使わせたり、実際に会って手渡ししたりしなくても、手軽に贈れる今風なギフトだ。送り手がスマートフォンの画面などで商品を選び、取得したURLを相手にシェアし、相手が届けてほしい住所と配達日時などを自分で入力するといった仕組みだ。
アイデアいろいろ...自宅で「夏のごちそう」、身近な人と楽しむ「冷凍ケーキ」
そごう・西武がアピールするのは、産地や素材にこだわった「夏のごちそう」などだ。人気店や各地のごちそうを自宅で楽しみたいというニーズが、コロナ禍によって定着しているとの見立てで、温めるだけでこだわりの味を満喫できる高級うなぎなどをそろえた。
若者を中心に関心が高まるサステナビリティ(持続可能性)に配慮したアラスカ産のシーフードもお薦めという。
高島屋は、自宅用や身近な人へのギフトとしてお中元を利用する人が増えているとして、ガーデンパーティーやキャンプなどに活用できる商品を準備。フライパン一つで味わえる本格パエリアや温めるだけでいいラザニアなどがある。
また、保存が可能で、親しい友人が突然訪ねて来てもすぐに出せる「冷凍ケーキ」はお中元ギフトとしては新登場だという。
「密を避けたいという人はまだまだ多く、家の中で楽しめるお中元商品が引き続き求められるのではないか」(百貨店大手社員)との見方は強く、各社、前年以上の盛り上がりを期待している。(ジャーナリスト 済田経夫)