「不正が当たり前になり、惰性になっていた」
なぜ、これほどの不正が放置されていたのか。
漆間社長は「順次調査していく中で判明したもので、隠していたわけではない」と意図的な隠蔽は否定した。だが、調査委は、利益優先の企業体質が不正を生む土壌になったとにらんでいる。
実際、社内ではコストや納期を守るため、高額な設備が必要になる検査や手間のかかる工程を意図的に省いたり、正常な検査をやったかのように装う虚偽の書類を顧客に渡したりする行為が常態化していたという。
「不正が当たり前になり、惰性になっていた」
調査委の木目田裕委員長(弁護士)はこう指摘する。安全の基本である検査をおろそかにする姿勢は、発電所や鉄道といった基幹インフラにかかわる製品を手がける企業にとして致命的だ。
調査委に社内から寄せられた情報は2300件を超える。このうち、今回の報告書までに調査を終えたのは1900件程度と全体の8割にとどまる。
三菱電機は報告書公表直後の27日、エレベーターの安全装置に関する書類に不備があったまま国土交通大臣認定の確認申請をしていたと発表した。報告書でも不正の可能性に簡単には触れてはいたものの、国交省への報告を待って公表したため正式な説明が遅れたという。
調査委に寄せられた残る400件の追加調査で新たな不正の事実が明らかになる可能性は極めて高いといえるだろう。
「品質軽視、(自社の)正当化を是正しなければ再発防止はできない」
調査委の木目田委員長はこう強調した。
三菱電機は社内の人事制度の改革など再発防止策を講じるとしているが、会社の風土が変わらなければ、どのような取り組みをしても元の木阿弥だろう。再生の道は険しい。(ジャーナリスト 済田経夫)