映画界に新たな伝説がうまれそうです。先日公開されたアクション映画『トップガン マーヴェリック(Top Gun: Maverick)』が世界中で大ヒット!
公開直後の興行収入が好調で、各国で次々と記録を塗り替えています。主演のトム・クルーズにとって、過去最高の滑り出しとなったこの作品。日本でも劇場動員数が「シン・ウルトラマン」を抜いて初登場1位を獲得しましたが、なぜこれほどまでに人々を引きつけているのでしょうか?
いつもは辛口の海外メディアまでが、「すばらしい!」「過去最高傑作」と手放しで称賛している理由を探ってみました。
トム・クルーズ、「異端児」から「映画界の救世主」に!
『トップガン マーヴェリック』は、1986年に公開された『トップガン』の続編で、前作同様、トム・クルーズが主人公ピート・ ミッチェル(通称Maverick:マーヴェリック)を演じています。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて2年遅れの公開となった本作ですが、公開前から評論家たちの評判は上々。ふたを開けてみたら記録を塗り替える大ヒットになったと、各国メディアが伝えています。
'Top Gun: Maverick' jets to new box office record
(『トップガン マーヴェリック』が新たな興行収入記録を噴射:米CNN)
'Top Gun: Maverick' wins Tom Crouse first $100 million opening
(『トップガン マーヴェリック』はトム・クルーズ初の公開初週末1億ドル超えとなった)
世界同時公開となったこの作品。米国や日本だけでなく、欧州や南米など32の地域でトム・クルーズ史上No.1のオープニング記録を打ち立てるなど、記録ずくめのスタートになっています。
これまでも話題になった映画はたくさんありましたが、驚くのはメディアの「好評価ぶり」です。プレミア上映時から「すばらしい作品!」「評論家も絶賛」など、とにかくポジティブワードが全開で、「Tom Cruise is back !」(トム・クルーズが戻ってきた!)と、興奮ムードが漂っていました。
本作が好感されている一つ目の理由は、「映画館の復活」です。私も実際に映画館に足を運びましたが、ダイナミックで迫力満点の航空アクションを味わうには、劇場の大型スクリーンが最適!
コロナ禍で多くの作品が配信サービスに切り替えられたなか、「劇場上映」にこだわって2年間待ち続けた制作会社の戦略が功を奏して、映画館に出足が戻っていると報じられています。映画業界が活気づいただけでなく、久しぶりに「映画を満喫した!」と開放感を味わえることも、ヒットの要因だと思われます。
ちなみに、タイトルにもなっている「Maverick」は「異端児」という意味。「一匹オオカミ」のような人のことですが、本作の大ヒットでトム・クルーズが「異端児」から「映画界の救世主」になったことは間違いなさそうです。
第2の「ボヘミアン・ラプソディ」になる予感!!
『トップガン マーヴェリック』では、36年前は若き戦闘機パイロットだったトム・クルーズ演じる「Maverick」が初老の教官として登場しますが、「年齢が高い」のは主人公だけではありません。報道によると観客の年齢構成も、ヒットに影響しているようです。
Majority of viewers of the Tom Cruise film were over 35 - and they made it a hit
(トム・クルーズ映画の観客の大部分が35歳以上で、彼らがヒットを支えている)
Older audiences are finally returning to the movies
(ついに、年齢層の高い観客が映画館に戻ってきた)
ティーンが主流のアニメ映画と違って、本作は35歳以上の観客を映画館に呼び戻していることがヒットにつながっているとか。実際、地方都市でも順調に出足が伸びていたり、プラス料金を払ってIMAXや4Dスクリーンなどで鑑賞する人が多かったりと、ビジネス的に好影響となっているようです。
さらに、「超メガヒット」になりそうな第3の理由が、前作への「オマージュ」です。冒頭のシーンをはじめ、36年前の前作の「オマージュ」がところどころに仕掛けられていて、つい「あ、あのシーンがこの場面に復活」と、探してしまうのです。
この、「オマージュ」を探してしまう感覚は、あの大ヒット映画『ボヘミアン・ラプソディ』を彷彿とさせます。劇場で『トップガン マーヴェリック』を堪能した後に、自宅でDVDや配信サービスで『トップガン』を観て、「オマージュ」を確かめるために再度劇場に足を運ぶ......。そんなリピーターが増える予感がします。
世界中で「胸アツ体験」が広がっている『トップガン マーヴェリック』は、歴史に残る大ヒットになるかもしれません。
それでは、「今週のニュースな英語」は「maverick」を取り上げます。名詞だけでなく形容詞でも使われます。
maverick ideas
(型破りな発想、アイデア)
maverick governor
(無所属の知事)
Elon musk was known as a "maverick"
(イーロン・マスクは『異端児』として知られていた)
期せずして「映画館復活」の象徴となった『トップガン マーヴェリック』。「これぞ米国映画!」とも言えるエンタメ要素が満載で、コロナ禍で疲れ果てた人にとっても「救世主」になることでしょう。トム・クルーズの年齢を超えたエネルギーに脱帽です。
(井津川倫子)