物価は上がる一方で、収入はなかなか増えない......そんな厳しい経済環境を背景に、これから投資を始めようという人に向けた本が最近、続々と出版されている。「〇〇投資術」などと銘打った投資の入門書の中でもユニークなのが、本書「マンガ版 ながら投資生活 無理なく楽しい、お金の育て方」である。
「マンガ版 ながら投資生活 無理なく楽しい、お金の育て方」(TORANOTEC投信投資顧問株式会社著)フローラル出版
「ながら投資」とは、買い物しながら、仕事しながら、家事しながら、などの「〇〇しながら」でも投資ができる、というコンセプトだ。著者であるTORANOTEC投信投資顧問株式会社では、「すべての人を投資家に」というビジョンのもと、誰でも簡単に、楽しく将来に向けた資産形成を習慣化できるサービスとして2017年に投資アプリ「トラノコ」をリリース。2022年5月の段階では、口座開設申込数が累積で40万口座を超えるサービスに成長した。
歩くと「投資資金」を貯められる?!
本書は漫画仕立てで、資産の形成法、投資方法の選び方、ETF(上場投資信託)の解説と進み、最後に、投資アプリ「トラノコ」を説明する構成になっている。
やはりユニークなのは、この投資アプリ「トラノコ」。「トラノコ」では現金だけではなく、買い物などの日常生活で自然と貯まるポイントやマイルなども投資にあてられる仕組みが最大の特徴だ。それにより、投資がより親しみやすいものになる。以下、まずはその特徴を見ていこう。
<トラノコの特徴>
(1)積み立て投資はもちろん、日々のお買い物の「おつり」や、ポイント・マイルを投資にあてることができる。
仕組みとしては、登録したクレジットカードや電子マネー、銀行引き落とし等で買い物をしたとき、100円、500円、1000円で支払ったものとして、そこから発生する差額分を「おつり相当額」として計算し、投資できる「おつりで投資」機能を設けている。
いくらで支払ったことにするのかは、100円単位、500円単位、1000円単位の3つから選んで設定できる。たとえば380円分の買い物をしたときに、アプリ上に「おつり」として表示されるのは、
・100円単位→400円との差額分「20円」
・500円単位→500円との差額分「120円」
・1000円単位→1000円との差額分「620円」
となる。
この中から好きなものを選んで、「おつり相当額」を投資に回せるのだ。なお、承認されたおつりは、月に一度の「投資額締め日」にまとめて投資額として確定する。その後、「引き落とし日」に銀行口座からトラノコの投資口座へ振り替えられ、投資が行われる仕組みだ。また、連携しているnanacoポイント(株式会社セブン・カードサービス)などのポイントをそのまま投資に回す機能もある。
(2)歩くことや動画の視聴、アンケート回答で投資資金がもらえる。
たとえば、TORANOTECが運営する別アプリ「Money Step」を使えば、歩くだけで、1日5000歩で1円分、1万歩で3円分。月20万歩に達成すると10円分のポイントが貯まる。
また、「トラノコ動画」では、数十秒程度の動画を視聴すると1本あたり1ポイントが付与される。「トラノコアンケート」では、アンケートに回答すると各設問に設定されたトラノコポイントを獲得できる。
(3)金融工学を駆使した本格的な国際分散投資。
トラノコ・ファンドでは、将来のリターンの期待値(平均値)と、リスク(リターンの分散)の2つの尺度を用いて投資先を決定する平均分散アプローチを用いている。
世界の年金基金や中央銀行等にポートフォリオ構築やクオンツ分析を提供してきた実績のある経験豊かなクオンツ・リサーチの専門家が、高度な計量分析を駆使し、どの市場にどれだけ投資を行うと、最も効果的に分散投資を行えるかを算出したモデル・ポートフォリオに基づいてファンドを運用している。
なお、複数通貨の相対的な評価をもとに、米ドル建ての資産に対して市場環境に合わせた運用管理を行い、利益の最大化、リスクの抑制に努めている。
(4)投資するほどお得な料金体系。
手数料は業界最低水準の0.33%。他社平均が年率1.265%(投資信託協会国内のアクティブファンド平均運用報酬=2021年12月)であることを踏まえると、低い水準といえる。別途、300円の月額利用料はかかるが、ポイント獲得サービスなどを使えば、利用コストを下げることが可能だ。ちなみに、22歳以下の学生の場合、月額利用料が無料になる「トラノコ学割」もある。