国家公務員総合職採用職員の退職が増加している。人事院は2022年5月25日、中央省庁の在職期間10年未満の総合職採用職員の退職状況を初めて公表した。
2016年度から増加...2013年度比では43.4%増
中央省庁の総合職採用職員は将来の幹部候補で、いわゆるキャリア官僚と呼ばれる。
人事院ではこれまで公表していなかった在職期間10年未満の総合職採用職員の退職状況を2013年度に遡って公表した。
それによると、退職者数は2013年度から2015年度までの3年間は横ばいで推移していたが、2016年度から増加を始め、2019年度には250人を上回る265人が退職した。2013年度と2020年度の退職者数と比べると33人(43.4%)も増加している=表1。
2013年度は、それまでの「国家公務員試験Ⅰ種」から現在の総合職採用職員に本格的に切り替わった年だ。2013年度から2017年度までの3年間は低位で推移していた退職者数が、2016年度を境に急激に増加に転じた理由について、人事院では「把握していない」としている。
在職年数別の退職者数を見ると、在職10年未満は2013年度から2017年度までは100人未満で推移していたが、2018年度116人、2019年度139人、2020年度109人と3年連続で100人を超えている。
同様に、在職5年未満でも2016年に54人、2018年度70人、2019年度80人、2020年度55人と50人以上が退職。在職3年未満でも2016年度を境に、退職者数が増加している=表2。
在職10年未満は年齢的には30代になったところで、まさに働き盛りの世代だ。中堅幹部となり始め、仕事の実務を中心となって推進していく世代でもある。
その実務の中枢を担う在職10年未満の世代が、最も多い退職者数となっている点は大きな問題だろう。
そこで、在職年数別の退職率(各採用年度の採用者数における退職者数の割合)を見ると、在職5年未満退職率は2015年度に11.0%と10%を超え、2016年度も10.0%の退職率となっている。これは10人に1人が退職していることを意味する。
在職3年未満の退職率も、5年未満ほどではないが4~5%で推移している。つまり、20人に1人の割合で退職していることになる=表3。
退職率増加に懸念...キャリア官僚は不人気職業?
懸念されるのは、2013年度に比べ、在職10年未満の退職率も、在職3年未満の退職率も増加している点だ。
筆者は、2022年5月9日の「『国家公務員総合職』採用試験6年ぶり増加&女性割合は過去最高41%...だが、申込者数低迷は変わらず『官僚離れ』深刻(鷲尾香一)」で、キャリア官僚を目指す大学生が低下の一途を辿っていることを取り上げた。
この中で、かつて、国家公務員上級職として「キャリア」と呼ばれ、「天下国家のため」に日本の中枢で、国家を動かす仕事を望み、キャリア官僚を目指した頭脳明晰な若者がいた時代は過ぎ去り、長時間労働などが敬遠されて、すっかり大学生の不人気職業に成り下がってしまった、と述べた。
同様に、キャリア官僚の退職が増加している点も、「公僕」として国を支えていこうという人材が減少していることの表れのように見える。
もちろん、国家公務員に限らず、地方公務員も含め、公務員の数や職務内容、働き方などにはさまざまな議論があり、「公務員が多すぎる」という指摘もある。
しかし、民間企業とは違い、国家公務員は国民に奉仕することが仕事であり、国民生活を維持していくうえで重要な役割を担っている。仕事にやりがいを感じ、奉仕の精神を持った国家公務員、キャリア官僚が増えることを望むばかりだ。