徳島県上勝町の巨大ごみステーションに世界の人が集まる理由
この外国人観光客を地方に呼び寄せる、新しい観光のあり方の好例を紹介するのが、第一生命経済研究所総合調査部マクロ環境調査グループ研究理事の今泉典彦氏だ。
今泉氏のリポート「ここが知りたい『Withコロナ/Afterコロナの観光はどうなるのか』」では、地球環境保護やそれをも包含するSDGs(持続可能の開発目標)の達成に向けた「新しい旅のかたち」として、徳島県上勝町(かみかつちょう)のケースを紹介している。
上勝町は、徳島県の山間部にある人口1500人に満たない町だが、まちづくりの先進性で国内外から注目を集め、海外から見学に訪れる人が絶えないという。注目されたきっかけは、2003年に日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行ったからだ。ウェイスト(waste)には浪費、無駄、ごみ、廃棄物といった意味がある。
上勝町のホームページをみると、こう書いてある。
「上勝町のごみをゼロにする=ごみをどう処理するかではなく、ごみ自体を出さない社会を目指し、上勝町ではごみ収集を行わず、生ごみなどはコンポストを利用し、各家庭で堆肥化。瓶や缶などのさまざまな『資源』を住民各自が『ごみステーション』に持ち寄って45種類以上に分別、『ゼロ・ウェイスト宣言』から17年経過した現在、リサイクル率80%を超えています」
そして、「ゼロ・ウェイストセンター」と名付けられた巨大な「ごみステーション」は見所になっているのだ=写真参照。
こうした取り組みを今泉氏は称賛している。
「(上勝町では)『未来のこどもたちの暮らす環境を自分のこととして考え、行動できる人づくり』を2030年までの重点目標に掲げ、再びゼロ・ウェイストを宣言し、残りの20%のごみ削減を目指す。2020年5月末に上勝町に開業したホテルに宿泊することで先進的なゼロ・ウェイスト政策を学び、体験ができることで注目されている」
内外から訪れた人々は、「ごみステーション」に隣接したホテルを拠点にSDGsの先進的な試みを学びながら、山あいの自然を楽しむという仕掛けなのだ。
(福田和郎)