「サブスクで音楽を聞こう」「サブスクでクルマに乗ろう」......。「サブスク」が話題にならない日がなくなった。「サブスク」(サブスクリプション)とは、一般に「定額制の使い放題サービス」を意味するが、ファッションの世界にも進出している。
そんな「サブスクファッション」は世界的な環境保護運動の側面も持っているが、いったいどれだけ日本に浸透しているのか。モバイル市場専門の調査会社「MMD研究所」が2022年5月23日、27日に相次いで「洋服月額レンタルサービスに関する調査」と「洋服月額レンタルサービスの現状と今後の動向」を発表した。
それによると、日本でサービスを知っている人は52.9%、利用経験者はわずか2.5%という結果になっている。
「働く女性が洋服を選ぶ際のプレッシャーを和らげたい」
洋服月額レンタルサービス、いわゆる「サブスクファッション」とは名前の通り、服を「買う」のではなく、月額料金を払って「借りる」サービスのこと。買うより安いし、いろいろなブランドの洋服が楽しめる。季節ごとに服を買い替え、クローゼットを一杯にする心配もない。手持ちの服を増やすことなく、新鮮なファッションを着ることができる。
サービスによっては、気に入った服を買い取ることもできる。また、洗濯・クリーニングが不要で、万が一シミがついてしまっても、通常の汚れの範囲内であればそのまま返却するだけでOKのところが多いようで、手間が省ける(ただし、シミ・色落ちや破損状況などにより、弁償が発生するケースもある)。
使い方としては大きく分けて、レンタルする服を自分で選ぶタイプと、プロのスタイリストに選んでもらうタイプの2つがあり、コーディネートを考えるのが苦手な人や、忙しくてなかなか店を回る時間がない人には便利だ。
デメリットといえば、新品同様にクリーニングした後とはいえ、誰かが着た「中古品」であることだろうか。
もう1つ大事な点は、サブスクファッションが環境に配慮した「サステナブル(持続可能)な衣服」の1つとして世界的な潮流になっていることだ。環境省のホームページ「サステナブルファッション」を見ると、手放した後の服の行方としてリサイクルが14%、リユースが20%だが、焼却処分・埋め立てが66%にのぼるとある。膨大な無駄と環境破壊だ。サブスクファッションは「リユース」に当たる=イラスト参照。
その流れの草分け的存在となったのが米レント・ザ・ランウェイ社(2009年設立)で、今や「レンタルドレス界のアマゾン」と呼ばれ、全米を席巻中だ。ジェニファー・ハイマンCEOは「働く女性が洋服を選ぶ際のプレッシャーと、コストの負担を和らげたかった」と創業の理由を語り、米誌「TIME」が選ぶ「世界で最も影響力のある100人」に2019年に選出されたほどだ。
「認知・内容理解は女性が多いのに対し利用経験は男性が多い」
さて、MMD研究所が洋服月額レンタルサービスについて約1万人の男女に聞いた調査結果によると、「全く知らない」が47.0%と最も多い。次いで「言葉は聞いたことがあるが、内容はよく知らない」が28.6%、「だいたいどんなものか分かるが、利用したことはない」が19.5%だった。
これを消費者の購入意欲を「認知」⇒「興味・関心」⇒「比較・検討」⇒「購入・申込」と分解する「ファネル構造」という手法でみると、「認知」は52.9%、「内容理解」は24.3%、「利用経験」は2.5%となった。
続いて、サービスの利用状況を性別・年代別に割合で見てみると、利用経験者に当てはまるのは、女性10代(5.9%)が最も多く、次いで男性20代(5.8%)だったという(図表1参照)。
さらに、利用経験者に衣服の購入時・レンタル時・廃棄時にSDGs(持続可能な開発目標)を意識するかを聞いた。図表2がその結果だが、購入時・レンタル時には60代の意識が突出して高く、逆に、廃棄時には10代の意識が最も高かった。
一連の調査からMMD研究所は「利用状況を性別で見てみると、認知・内容理解は女性が多いのに対し利用経験は男性が多く、衣類におけるSDGsへの意識は女性よりも男性のほうが高いことが分かりました」と指摘している。
ちなみに、実際の利用経験者にメインで利用したサービスを聞くと、男性は「メチャカリ」(33.9%)が最も多く、次いで「SELECT」(19.4%)、「ビズ服」(15.8%)となった。女性も一番人気は「メチャカリ」(22.9%)で、次いで「airCloset」(20.2%)、「Brista」(14.7%)の順だった。
10代と60代に今後、広がる可能性
また、利用経験者に利用した理由を聞くと、ベスト3位に「返送料が無料」「洗濯やクリーニングなどの手入れの手間が省ける」「無料トライアル期間だから」が入り、「SDGsに配慮したい」は4位だった。まだ、SDGsに対する配慮よりも「安さ」や「手軽さ」を重視する傾向が高いようだ。
MMD研究所では、10代のSDGsに対する意識が特に高いことに注目し、
「10代は購入時には意識が最も低いものの、フリマアプリやリサイクルショップの活用、回収サービスを行っている企業への持ち込みなど、廃棄時に環境への配慮ができる仕組みづくりは確立され始めているのかもしれません」
と、今後、サブスクファッションが10代を相手に伸びる可能性を分析。
また、シニア層に対しても、
「購入時・レンタル時に意識しているのが最も高かった60代は廃棄時では最も低い結果となりました。リサイクルショップでの購入などは考えやすいものの、廃棄時にそれを思い浮かべる人は10代よりは多くはないのが現状なのではないでしょうか。フリマアプリサービスを提供するメルカリがNTTドコモとシニア層をターゲットとしたコンセプトストアを展開したように、シニア層の衣類の廃棄や処分方法が身近になる働きかけが今後必要とされると考えられます」
と、サービス内容の工夫によって、シニア層もターゲットにできると見ている。
調査は2022年4月14日~4月25日にスマートフォンを所有する18歳~69歳の男女1万833人(男性5375人、女性5458人)を対象に行われた。そのうえで利用経験者264人(男性165人、女性109人)に集中的に聞いた。
(福田和郎)