地銀決算出そろう...「業績好調」の背景に、コロナ対応の特殊要因 それだけに「先行き不安」ぬぐえず...資源高が融資先に打撃も

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   地方銀行の業績が好調だ。株式上場している地方銀行77行・グループの2022年3月期の連結最終損益は、比較可能な74行・グループの合計の利益が前期比25%増の8107億円になった。

   ただし、新型コロナウイルス対応の特殊要因によるところが大きく、今後については資源高などが融資先の業績を圧迫すると懸念しており、2023年3月期は減益を見込むところが多い。

  • 地方銀行の決算に注目
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8割超が黒字転換または増益も、有価証券運用での含み損急増

   持ち株会社に移行して連結決算の前期との比較ができない北国フィナンシャルホールディングス、十六フィナンシャルグループ(FG)、おきなわFGを除く74行・グループの22年3月期は、8割超の63社が黒字転換または増益だった。

   新型コロナウイルスを受けた政府による企業の資金繰り支援で、政府保証付き融資が急増し、一時的に収益がかさ上げされた。融資先の倒産に備える費用(貸倒引当金)も大幅に減った。個人向けの投資信託販売による手数料も伸びた。74行・グループ合計の最終損益8107億円は、期初予想の7209億円から上振れした。

   一方、有価証券運用で含み損を抱えるところが急激に増えている。

   資源価格高騰やコロナに伴うサプライチェーンの混乱などで米国の物価が急騰し、金利も上昇。ロシアのウクライナ侵攻による市場の混乱も加わり、保有する有価証券の時価評価額が下がっているのだ。全ての銀行・グループで有価証券の評価損益が悪化し、合計で評価益は前の期から3割(約1兆7000億円)減って、3兆9000億円弱になった。

   前の期に評価損を抱えていたのは1行だけだったが、22年3月期は11行・グループに増えた。新たに評価損に陥ったなかで6行・グループはSBIホールディングス(HD)が出資を受けていた。

   その一つ、176億円と最大の含み損になったじもとHD(仙台市)は、前期の評価益12億円から急降下した。傘下のきらやか銀行(山形市)は単独での評価損が122億円に達し、金融機能強化法に基づく公的資金を申請する検討に入った。

   運用助言会社などによると、こうした地銀の含み損は、外国債券や外国投資信託で多くが発生しているといい、米国の利上げやロシアの侵攻による世界市場の混乱の影響を受けたかたちだ。

   もちろん、債券の場合、時価が下がっても満期まで持てば全額償還され、含み損が直ちに実現損益になるわけではないが、体力のない地銀が、外債などリスクの高い投資に走ることを問題視する声が出そうだ。

財政支援が終わり...支え失った企業の倒産は増えるか?

   今後はどうか。2023年3月期の業績予想を集計すると、合計では最終損益が9100億円と1割増益になるが、77行・グループのうちの6割にあたる46行・グループが減益を見込んでいる。

   業績の格差が広がるということだが、増益を見込むところも含め、円安やロシアの侵攻による原材料の一段高、コロナ禍による融資先の経営難などを先行きの不安材料として挙げる。米国の金利上昇などで保有債券の価格が下がるなど、金融市場の変調も懸念する。

   とくに、コロナ対応の政府保証付き融資などはいつまでも続くわけではなく、平時に向かうにしたがって、ポスト・コロナの企業再生が本格化する。企業の「生命維持装置」ともいわれる融資やさまざまな財政支援が終われば、企業の再生を支える役割は金融機関、とくに地域では地銀が担うことになる。

   支えを失った企業の倒産が増えるとの見方もあり、地銀も体力勝負になる。きらやか銀行のように、公的資金を活用する銀行が他にも出ると見込まれるほかか、県境を越えた統合など再編が加速する可能性もある。(ジャーナリスト 済田経夫)

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