バイデン大統領がウクライナ侵攻を許した時点で経済制裁は失敗...
そもそも、「バイデン大統領が、プーチン大統領の違法なウクライナ侵攻を許した時点で、経済制裁は失敗している」という見方を提示しているのは、一般財団法人国際貿易投資研究所の客員研究員・木村誠氏だ。
このリポート「対ロシア経済制裁の効果は限定的か」(5月16日付)は、全12ページの詳細な内容だ。そのなかで木村氏は、米国ピーターソン国際経済研究所の経済学者G.C.Hufbauer(ハフバウアー)氏の指摘に注目する。「2021年12月、バイデン大統領はロシアがウクライナに軍事侵攻すれば、米国は『ハイインパクトな制裁に踏み切る』と警告したが、その具体的な内容を開示しなかった。大規模な制裁が事前に予知できていれば、ロシアは軍事介入に踏み切らなかった可能性もあるとHufbauerはみる」
Hufbauer氏が、経済制裁がうまくいかないとみるのは、親ロシア国や中立国が多いからだ。
「2022年3月2日の国連総会でのロシア非難の投票では、ロシアを支持したのは4か国(ベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、シリア)で、中国、インド、パキスタンなど35か国は棄権に回った。これら親ロシア国や中立国は、ロシアからガスや石油を大幅に値引きして輸入し、また消費財や工業製品をロシアに高値で輸出する可能性がある」
また、プーチン大統領の「人生観」も制裁を困難にしていると指摘するのだ。
「プーチン大統領がウクライナ領土からすべての軍隊と兵器を撤去し、2つの新しい共和国の承認を撤回することが制裁の最終目標となる。しかし、Hufbauerは、プーチン大統領はウクライナ併合に自分の政治的将来と、場合によっては人生を賭けており、プーチン政権が続く限り完全な原状回復は不可能だとみている」