制裁対象の「暗号資産」取引所は運営されていた!
その間、ロシアは「抜け道」を使って時間稼ぎをする可能性があり、手段の1つに使われそうなのが「暗号資産」とされる。そのロシアの「暗号資産」をめぐるダークな側面を暴くのが、第一生命経済研究所主席研究員の柏村祐氏だ。
このリポート「ロシア『暗号資産制裁』の衝撃~2500万ドル相当のビットコインが押収されたダークネットマーケット~」(5月26日付)によると、柏村氏自ら、制裁措置の対象になっているはずの暗号資産取引所ウェブサイトにアクセスを試みたという。米国財務省が制裁措置の対象にした、エストニアで登録されている「Garantex」だ。
「Garantex」では法定通貨と暗号資産の交換が可能で、過去にロシアのサイバー攻撃集団である「Conti」から600万ドル近くの入金履歴が確認されている。「Garantex」は今年2月、エストニアの金融当局により、暗号資産サービスを提供するライセンスを失った。それにもかかわらず、柏村氏が「Garantex」のウェブサイトにアクセスすると、こう表示されたのだ。
《Garantex暗号通貨取引所は正常に動作しています。お客さまは取引所の全機能を完全に利用できます。私たちは24時間連絡を取り合っています。いつものように!》
これでは、暗号資産の制裁など何の意味もないではないか。柏村氏はこう結んでいる。
「(Garantexは)本稿執筆時点(2022年5月下旬)では、通常通り取引できる状態となっていた。このような免許を持たない暗号資産取引所が運営を続けることは、西側諸国によるロシアへのSWIFT(国際銀行間通信協会)制裁に対する抜け道になる可能性もあり、更なる対策の強化が求められる」