2022年5月18日と19日、駐日オランダ大使を迎えて、「BICYCLE-E・MOBILITY CITY EXPO 2022~自転車・電動モビリティまちづくり博~in 東京ドームシティ・プリズムホール」が開催された。主催は、BICYCLE-E・MOBILITY CITY EXPO 2022 実行委員会(株式会社ライジング出版内)。
急速に存在感を増している自転車&電動モビリティ
BICYCLE-E・MOBILITY CITY EXPO 2022(以下、EXPO)は、「ウィズコロナの時代にあって急速に存在感を増している自転車&電動モビリティに焦点を合わせ(中略)環境未来都市の創造を推進するための展示イベント」(EXPOのオフィシャルガイドブックより)。
会場には、4輪車、2輪車などの様ざまな乗り物が展示され、来場者からの質問に答えるなど、各ブースは賑わいを見せていた。
上記写真のトヨタ車体の超小型BEV「コムス」も、シートに座ったり、貨物室を確認したり、説明を求める人も多く、スタッフが笑顔で対応する様子が印象的だった。
BEVとは、Battery Electric Vehicleの略で、バッテリーで動く電動車のこと。「コムス」の充電は家庭用のコンセントで可能なため、充電スタンドが近くにない場合でもエネルギーの補給が可能。なお、東京都の場合、今なら購入補助金が最大38万円支給される。
「乗り物はないのですか?」...インパクト大な展示が!
EXPOでは、非接触型の充電設備など、充電についてのさまざまな展示も行われていた。
充電に関するブースの中でも、とくに目を引いたブースが日本フォームサービス株式会社だ。なんと、乗り物は1台も置いておらず、よくあるコンセントのタップがたくさん並んでいるだけの展示だ。
記者も思わず、「乗り物はないのですか? パソコンのセールスですか?いったいこれは何ですか?」と聞いてしまった。逆に、インパクトのある展示だったかもしれない。
日本フォームサービスが展示していたのは、「スマート充電タップ」(特許出願中)。この製品は、家庭の15A(アンペア)のコンセントで、最大100台の電動モビリティの充電を可能にするもの。
電動モビリティを充電しようと複数台同時にコンセントへさすと、契約電力量をオーバーしてブレーカーが落ちることもあるそうだ。その問題を解決できるのが「スマート充電タップ」で、設定電力(たとえば15A)の範囲内で、接続した複数のコンセントに対して順々に充電状態を把握しつつ充電できるという。
この機器を使うことで、電力会社との契約電力量を大きくすることや、コンセント設置工事などが不要になる。コストを考えるととても魅力的なアイディアだ。
家庭でも複数台の電動モビリティを持つ時代も遠くはないと思うと、駐輪場の経営者だけでなく、家庭用としても注目を集めていきそうだ。
注目の「チャレンジZEV2030プロジェクト」とは?
公益財団法人東京都環境公社は、電動バイクメーカーのaidea株式会社と共同でブースを展開。「チャレンジZEV2030プロジェクト」について、パネル展示による詳しい説明が行われていた。このプロジェクトの正式名称は、「ゼロエミッション・ビークル普及拡大連携プロジェクト」。ZEV(ゼブ)とはZero Emission Vehicleの略だ。
その狙いとして、東京都は『CO2を排出しない環境先進都市「ゼロエミッション東京」の実現に向けて、都内で新車販売される乗用車を2030年までに、二輪車は2035年までに100%非ガソリン化』を目指す取り組みを実施中(東京都地球温暖化防止活動推進センターホームページより)。今回の出展もその一環の取り組みだ。
上記写真のaidea社の「AAカーゴ」も電動であり、走行にガソリンを必要としない。そして、「AAカーゴβ8」は都の「電動バイクの普及促進事業」の補助金が受けられる車両で、国の「CEV補助金」と合わせると最大40.2万円の購入補助金が受けられるという。
aidea社によると、AAカーゴは日本マクドナルド社やDHL社などでも採用が進んでおり、写真の通り女性でも足をそろえて乗りやすく、幅広いユーザーが利用する法人用途でも運用しやすい乗り物だという。
なお、「AAカーゴ β8」は、2022年1月に国土交通省による型式認定を受けており、aidea社は国内第5のバイクメーカーとなった。同社では、よりいっそう信頼性の高いモノづくりに邁進していくという。
同社によると、AAカーゴを試乗してみたいときは、電話またはメールで予約のうえ、赤坂ショールームに行けば手配可能だという。補助金の申請方法などについても説明が受けられるそうだ。
実証実験でノウハウ蓄積に取り組む「電動キックボード」
電動モビリティの累計販売台数で2017~2020年の4年連続で世界一(キックボード以外の製品も含む)を誇るYADEA社。その日本代理店である長谷川工業株式会社では、上記写真の「KS5 PRO」のほか、千葉市と共同で実施中の、電動キックボードに関する実証実験についても展示発表を実施していた。
実証実験で展示されていた電動キックボードは「SUMRiDE」という名称で、Segway discovery社製。この実証実験は、「電動キックボードの走行環境や車両保安基準等、適切な規制を検討する」(千葉市ホームページより)もの。走行可能エリアは広く、千葉みなと駅~海浜幕張駅周辺エリアとなっているため、走りがいのあるライディングも楽しめる。
同社では、実証実験で得られた様ざまなデータをもとに、電動キックボードの便利さの提案と、安全な普及に取り組んでいくという。
電動4輪車の警備ロボット、消毒液の散布もまかせて!
自動化技術が進歩し、親しみやすいデザインをまとって実用化されている展示も興味深かった。中でも、警備ロボットとして動く「PATORO(パトロ)」(株式会社ZMP)は強く印象に残った。
「PATORO(パトロ)」は電動4輪車ロボットなので、不正侵入者とはちあわせしても怪我をするリスクがないのも特徴。さらに、パトロールしながら消毒材の散布など衛生対応も並行して可能という。
なお、「PATORO(パトロ)」は3兄弟で、無人宅配ロボの「DeliRo(デリロ)」(上記写真中央)と歩行速モビリティの「RakuRo(ラクロ)」(上記写真右)もラインナップされている。技術そのものだけでなく、インターフェイスやデザインも重要だと感じさせる展示だった。
乗り物として乗りたい、ほしいと思うモビリティを!
EXPOで印象的だったのは、来場者が熱心に各ブースで説明を受けていた姿。地球温暖化やCO2排出量の削減など環境問題への関心の高い来場者が、それぞれ問題意識を持ちながら展示を見ていたことがうかがわれる。
技術の進歩だけでなく、SDGsのゴールを目指すうえでも関心の高まりを見せているのがこの分野。乗り物として乗りたい、ほしいと思うモビリティも多いため、趣味の視点も交えて、今後ますます幅広い層から注目されそうだ。
(会社ウォッチ編集部)