市場の目は「金利ショック」から「景気ショック」に
同じく、米国経済の厳しい状況が続くと見るのは、J.P.モルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト前川将吾氏だ。
リポート「金利上昇よりも景気後退を恐れ始めた金融市場」(5月23日付)では、金融市場の目は「金利ショック」から「景気ショック」に移ったと指摘する。
「直近2週間の金融市場は、これまで警戒されていた『金利上昇⇒株安』ではなく、米国の景気後退懸念を反映した『株安&金利低下』が生じています。言い換えれば、『米国の景気や企業業績は強いが、金利上昇による割高感の修正で株安』から、『今後は景気や企業業績が悪化するのでは?との不安による株安』へと変化しています」
と、分析するのだ。
実際、4月以降、市場予想を下回る景気指標が増えており、5月18日には米小売り大手ターゲットが市場予想を大きく下回る悪い決算を発表するなど、コスト増による企業収益の悪化と、物価上昇による消費の減速の懸念が一気に広がり、米国株の大幅下落につながった。
当面の相場見通しはどうなるのか。前川氏はこう予測する。
「(1)米国のファンダメンタルズに陰りが見えるとはいえ『早期の景気後退入りを確実視する』のは時期尚早で、(2)足元は中国の好材料が投資家心理を支えている(上海市の都市封鎖解除への期待など)こともあり、当面の下値余地は限定的と考えます。
ただし、米国の高インフレ&景気減速はすぐには変わらず、『例えば、来年に景気後退入りする可能性を否定できない』という状況下では、株価が反発しても戻り売りの圧力が強く上値余地も限定的でしょう」
と、警戒を呼びかけている。