食品の値上げがまだまだ止まらない――。世界的な穀物相場の上昇による原材料費や原油価格の高騰に伴う物流費の値上がり、また急激に進んだ円安などによって、コストの増加が続いているからだ。それにより、全面的な価格アップに踏み切る企業が目立っている。
帝国データバンクが2022年5月21日に発表した「『食品主要105社』価格改定動向調査(5月)」では、上場する食品主要メーカー105社の、2022年以降の価格改定計画(値上げ、実施済み含む)を追跡調査した。その結果、5月19日までに、累計8385品目で値上げの計画が判明したという。
今年の夏は「値上げの夏」!?
この結果は、前回調査後の4月14日以降の1か月間で、約2000品目が新たに値上げに向かったことを示している。このうち、5割超の4770品目は5月までに値上げした一方、6月以降は3615品目で値上げが行われる見通し。とくに、7月の値上げ品目数は1500品目を超えるといい、単月としては今年で最も品目数が多くなる=図表1参照。それだけに、帝国データバンクは「今年の夏は『値上げの夏』となりそうだ」と見る。
同社によると、食品値上げの背景として、「食用油」と「小麦粉(製粉)」の価格急騰による影響を挙げている。輸入小麦の政府売渡価格が前年比2割増の水準が続いたことで、小麦粉を主原料とする食品の値上げが相次いだ。
さらに、これらを副原料とする周辺商材にも影響が急速に波及し、価格へ反映させる動きが急増したという。そうしたことから、各品目の価格改定率(各品目での最大値)は、平均で12%だった。
分野別には「加工食品」が最多...小麦価格と油脂の調達価格高騰
値上げとなった品目は、食品分野別にはどうなるのか。図表2のように、最多は、加工食品の3609品目だった。前月から700品目増加している。なお、4割近くは6月以降の値上げとなる。値上げ率平均は13%。6月以降、小麦価格と油脂の調達価格高騰を背景にした値上げが多く見られたという。
次いで多いのは、調味料の1702品目で、値上げ率平均は10%だった。ドレッシングやマヨネーズを中心に、菜種油など食用油の価格高騰が、価格に反映されたかたちだ。
つづいて、酒類・飲料は1188品目。6月以降の値上げ品目となる割合が約8割と、全分野で最も高かった。これは、円安などの影響に加え、ビール類などでは麦芽・トウモロコシの価格高騰の反映。飲料は、原油から作られるペットボトル原料の価格高騰によって、清涼飲料水の価格が引き上げられることが要因とみられる。
菓子(523品目)は、ジャガイモの不作のほか、油脂、砂糖、包装資材などの価格高騰が響いた。パン(454品目)は、輸入小麦の価格高騰による影響を大きく受け、年内に複数回の値上げを行ったケースもみられるという。
こうした状況に、帝国データバンクは、
「(これまでは)内容量を減らして値段を据え置く『ステルス値上げ』や、小幅な値上げを数回行うことでコストアップを吸収してきたものの、ここに来て大幅な価格引き上げを余儀なくされた例も散見された。
食料品の価格高騰は中長期的に続くとみられるなかで、最近の急激なコストアップによって『企業努力で吸収可能な余力を大きく超えた』ケースが足下で増加している。そのため、今後さらに原材料価格の高騰が続けば、直接売価に反映せざるを得なくなるケースは今以上に増えるとみられ、秋口以降も『値上げラッシュ』は続く可能性がある」
と指摘している。