鉄道係員への暴力、前年度の大幅減から一転増加...コロナから「日常」戻り始めた皮肉な結果(鷲尾香一)

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暴力行為のきっかけ、明らかに増加しているのが...

   主な発生場所としては、ホームが52件で全体の41%を占め、次いで改札の37件(30%)となっており、この傾向は2020年度、2019年度と大きな変化は見られない。

   ところが、何をきっかけに発生したかを見ると、2021年度は2020年度、2019年度に比べて「酩酊者に近づいて」が明らかに増加していることがわかる=表3

   これは、新型コロナの感染防止対策として、宴会の自粛など飲食店での飲酒を制限されたことの反動なのだろうか。

   ただ、暴力行為加害者の飲酒状況では、「飲酒あり」が2019年度は124件(68%)、2020年度も71件(68%)、2021年度も84件(67%)と、ほぼ同じ比率を占めている。したがって、飲酒による酩酊が暴力行為発生に大きく関わっていることがわかる。冒頭のキャリア官僚のケースでも、やはり酩酊状態だった。

   新型コロナの感染防止から制限されていた行動が解除され、徐々に新型コロナ前の生活を取り戻し始めていることは歓迎すべきことだが、せっかく減少した暴力行為が再び、新型コロナ前の状況を取り戻すことは憂慮すべきことだ。

   新型コロナは私たちの生活にさまざまな悪影響をもたらしたが、一方では暴力行為の減少という思わぬ副産物を生み出だした。こうした好影響だけは、新型コロナ前に戻らないことを強く願いたい。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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