「上司も部下と対話かメールかは、ケースバイケース」
――ただ、心や情緒を大事にしたい人々からは、「職場はオンラインショップではない。隣にいる相手にメールするなんて、シュール」という辛らつな意見も年配者を中心に多く寄せられました。
川上さん「ほどよいコミュニケーションの取り方は、当事者間の関係性やシチュエーションで異なります。たとえば、質問した側が回答を貰う際に『メールは苦手なので直接話しかけて欲しい』と思ったとしても、回答する側が忙しい中で時間をつくってメールを返してくれるのであれば、質問した側が回答者の都合に合わせるべきです。
メールが苦手な上司に連絡をする場合は、部下側が気を利かせて、極力対面や電話の手法を用いたほうがよいでしょう。隣の席にいる同僚に連絡する際にも、同僚が忙しそうなら、声がけして手を止めさせるよりも、メールを送っておいたほうが親切かもしれません。
一方、対面で話すことへのこだわりが、生産性を上げられない原因になることもあります。メールが苦手だからと、メールで確認すれば済むことをわざわざ上司が部下に対面で報告させたりするようでは、時間を浪費させてしまいます。
時代の変化と共に、ツールの使い方を覚えることも必要なはずです。コミュニケーション手法が多様化する中で、効率性と心や情緒などのバランスを考慮しながら、最適な方法をケースバイケースで選択する必要があるのだと思います」
――ということは、上司の立場として「良い話は2割増し、悪い話は2割引だから、直接話して部下の表情をみる」という人もいましたが、必ずしも対話にこだわる必要はない、ということですか。
川上さん「そのとおりです。経営者や管理職など、何らかの判断を委ねられている立場の人が必要とするのは判断材料となる『事実』。2割増しの情報も2割引の情報も不要で、メールでも対面でも、大切なことはありのままの『事実』を把握できるかどうかです。
直接話さないと確認できない場合もあれば、メールの報告で十分な場合もあると思います。そこには、部下のタイプや確認したい情報の内容、裏付けとなる他資料の有無、上司自身の予備知識など、さまざまな要素が影響してきます。メールだけでよいのか、直接話すべきなのかは、それらの要素を総合的に勘案したうえで、ケースバイケースになってくるのではないでしょうか。
外資系企業では、電話でやり取りするという意見もありましたが、人それぞれやりやすい方法があるはずです。また、仕事の重要度によっても変わってきます。たとえば、億単位の大きなお金が動く案件についての相談事項であれば、メール内容を踏まえたうえで直接電話でも話し確認を取る、ということも必要かもしれません。一方、懇親会の会場が決まりました、というメール連絡に対して、イチイチ電話で確認をとる必要はないはずです」