「メール派は効率性、対面派は心と情緒を求める」
――論争の背景には、「職場コミュニケーション」のあり方の問題があると思います。単純に分けると、メールによる連絡・相談と対面による話し合いのどちらがよいのかですが、川上さんが研究顧問をされている働く女性の実態を調べる「しゅふJOB総研」で、こうしたテーマを調査したことはありますか。
川上さん「メールはオンラインツールを利用したコミュニケーションで、対面はリアルな場で行うコミュニケーションです。社会生活における場面には、オンラインのほうが適していると思われるものもあれば、そうでないと思われるものもあります。
そのような観点から、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層に、次の調査をしたことがあります。『あなたの生活周りで、オンライン化が進んで欲しいと思うものはありますか』と尋ねたところ、最も多かったのは『行政機関の各種手続き』でした。一方、逆に『オンライン化を進めないほうがよいと思うものはありますか』と尋ねると、『結婚式などの慶事』が最も多くなりました。
◇オンライン化が進んで欲しいもの、進めない方が良いもの
『行政機関の各種手続き』は、できる限り手間を省いて効率的に済ませたいもの。それに対して、『結婚式などの慶事』は、リアルな場を共有すること自体に意義があり、効率性よりも人としての心や情緒などが重んじられるものです」
――たしかにそうですね。
川上さん「それで、『オンライン化して欲しいもの』と『オンライン化して欲しくないもの』の2つの傾向の違いを仕事上のコミュニケーション手法に当てはめてみると、効率性を求めるだけであれば、メールやチャットはおおむね目的を満たすと思います。一方、コミュニケーションに心や情緒も求めたい場合は、メールだけでは不十分で、対面であることが重んじられるのだと思います。
これらは、メール派と対面派の大まかな傾向として推察される1つの要素に過ぎませんが、職場の中で効率性を求める人と、心や情緒を求める人とが混在していれば、どうしても葛藤は生じてしまうことになります」