離島を結ぶ厳しい経営環境にコロナ禍の追い討ち
東京商工リサーチは、佐渡汽船(新潟県佐渡市)がコロナ禍のなかで債務超過に陥り、今年(2022年)5月6日に東証スタンダードの上場を廃止したと紹介している。
J-CASTニュース会社ウォッチ編集部の取材によると、佐渡汽船は長年、佐渡の島民にとって観光の柱だった。佐渡空港の運航が休止している現在、新潟県側本土とつなぐ唯一の交通手段でもある。しかし、債務超過額が約30億円に膨らみ、公共交通運営会社「みちのりホールディングス」(東京都千代田区)の傘下に入り、今年3月に私的整理で事業再生計画を成立させ、再生に動き出した。
佐渡汽船の場合は必ずしも、新型コロナや原油高だけが原因ではない。佐渡の過疎化による人口減少が大きな打撃になっているのだ。
だから、東京商工リサーチでは、佐渡汽船のように、離島を結ぶ旅客船事業者の厳しい環境に新型コロナの感染拡大が襲いかかり、急激に業績が悪化した旅客船事業者は多いとして、こう訴えている。
「国土交通省は、(中略)全国の小型旅客船事業者に対し、安全管理規程に定められた運航基準の遵守を指導している。ただ、今回の(知床の遊覧船)事故によるイメージダウンで売上が落ち込む旅客船事業者が増える事態も想定される」
「景勝地の船舶遊覧が観光客を呼び、宿泊、飲食、土産物などへの観光消費が地域経済の柱になっている観光地もある。旅客船事業者は設備維持だけでなく、従業員への安全教育も欠かせない。安易なコスト削減が安全を脅かすことがあってはならない。資金繰りが悪化した事業者の安全対策への支援も真剣に検討すべきだろう」
「旅客船事業者は中小・零細規模が大半を占めるだけに安全対策を事業者任せにせず、国や自治体など行政からの支援も必要だろう」
調査は主な業種が「沿海旅客海運業」「港湾旅客海運業」の企業を「旅客船事業者」と定義、2021年、2020年、2019年の3期で売上高、利益が比較可能な95社を対象とした。あくまで海運が対象で、川下り船や屋形船など川や湖の水運業者は除外した。