大事な仕事が滞っているのに、肝心な報告をしてこない部下...どう諭す?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE 3】(前川孝雄)

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   「前川孝雄の『上司力(R)』トレーニング~ケーススタディで考える現場マネジメントのコツ」では、現場で起こるさまざまなケースを取り上げながら、「上司力を鍛える」テクニック、スキルについて解説していきます。

   今回の「CASE 3」では、「肝心な報告をしてこない部下」のケースを取り上げます。

  • ホウレンソウの機会をつくることがポイント
    ホウレンソウの機会をつくることがポイント
  • ホウレンソウの機会をつくることがポイント

どうして、すぐに報告・相談しないんだ!

【上司(課長)】Bさん。ところで、D商会さんとの商談の件はどうなってるのかな?
【部下(Bさん)】はい。まだお返事を頂いていませんが...。
【上司(課長)】もう1週間以上も経つのに、何の返事もないの?
【部下】いえ。一度連絡があり、提案内容がいまひとつしっくりこないので迷っているとのことでした。
【上司】えっ! それでどうしたんだ?
【部下】あらためて「ぜひご検討ください」とお願いして、お返事を待っているところです。
【上司】それなら、どこがしっくりこないかご感想を聞いて、フォローすべきだろう。どうしてすぐに報告・相談しないんだ!
【部下】先方が特に何もご質問されないので、いいのかな...と思いまして。
【上司】大切な商談なのに、そんな勝手な判断は困るな! ホウレンソウがなってないぞ!
【部下】はぁ...。

   大切な商談を任せたにもかかわらず、なんら報告してこない部下。しびれを切らした上司が状況を確認すると、商談が暗礁に乗りかけているにも関わらず、自己判断で何ら手を打たず、放置している状態。上司からすると「この大事なタイミングで報告・相談をしてこないとは何事か!」という場面ですね。

   とくに若手社員などで、適切なホウレンソウ(報告・連絡・相談)の習慣がなかなか身につかない部下はいるものです。こうした部下に対し、あなたならどう諭しますか?

あらためて「ホウレンソウは仕事の基本だ」と言い聞かせ、徹底を促す?

   上記のケースのように、部下が大事な場面で報告や相談を怠ったならば、上司は次のように対応することが考えられるでしょう。

   「私に何の相談もなく進めているけれど、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)は仕事の基本だよ」と再度言い聞かせ、報告が重要であることを徹底させる。

   冒頭ケースのように、いきなり??りつけるのではなく、相手が受け入れやすいように、冷静に諭す内容としては順当とも考えられます。ただ、私は、若手社会人から、次のような意見をよく聞くのです。

「上司からは『あなたに任せる』と言われたのに、時々思い立ったように『ちゃんと報告しろ』のなんのと口出しされる。理不尽だ」
「上司は『自分でしっかり考えて行動するのが社会人だ』と言うくせに、任せた仕事が思うように運ばないと『なぜちゃんと報告・相談しなかったんだ!』と叱責する。どうしていいかわからない」

   すなわち、「会社員なのだから、任されたからといって、上司に報告をしなくていいわけがないだろう」というのは上司側の理屈ではあっても、部下にとっては理解しにくい場合もあるのです。

定期的な報告の機会をつくり、適切な習慣を身に着けさせる

   とくに、経験が浅い部下に対しては、仕事を任せる際に、あらかじめ「途中経過の報告や相談をするように」と教えておくことが必要です。また、単に報告や相談を求めるのではなく、なぜそれが必要なのかも話しておきましょう。どんな仕事も一人ではできないこと、情報が共有されれば、上司や周囲から適切なサポートを受けられることなどを、噛んで含めるように言って聞かせることです。

   ただし、問題になりがちなのは、部下が自分で報告すべきタイミングを見極められないケースです。そうした部下には、次のような働きかけが考えられます。

   「週に一度は、必ず進捗状況を報告しなさい」と指示をしたうえで、「チームで仕事をするには情報共有が大事なんだよ」と教える。

   若手の場合には、上司に声をかけることをためらう傾向があります。現在はコロナ禍で在宅勤務をする場合も多く、なおさら部下は上司への報告・相談を躊躇しがちです。かつて、初の海外出張に行ったという女性から、次のようなエピソードを聞きました。

「『用もないのに、忙しい上司を電話口に呼ぶのもどうか』と思って、まったく連絡をしなかったら、後で『無事に着いたとか何とか、ちゃんと報告しろ!』と叱られた」

というのです。

   部下は上司が思う以上に、上司に対して遠慮するもの。こと若手部下に対しては、日常の業務に慣れるまでは、上司のほうから声をかけるなりして、ホウレンソウの機会を確保することが必要なのです。

※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著「本物の上司力~『役割』に徹すればマネジメントはうまくいく」(大和出版、2020年10月発行)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。


【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の「上司力」』(大和出版)等30冊以上。近刊は『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks、2021年9月)および『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所、2021年11月)。

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