「いいな」「好きだな」と感じる人やモノは、直感的に「なんとなく」選ばれているものです。初対面の人や同僚、知人や友人、家族と話すときにも偶然交わした言葉で好印象を与えられたら、想像していなかったチャンスが訪れるかもしれません。今回は、直感的に早く・強く・心に伝わる話し方のテクニックを紹介します。
「たった一言で印象が劇的に変わる! 話し方ドリル」(神原智己 著)総合法令出版
会話が途切れた時にはどうする?
結婚式・同窓会・会食などで会話が途切れて、気まずい思いをすることがあります。このようなとき、「見えているものについて話す」と会話が盛り上がる、と神原さんは言います。
「結婚式や同窓会、会食などで会話が一段落した後、次の話題が見つからず、無言のままだと気まずくなってしまいますよね。それほど親しくない人や、はじめて会う人との会話でよくあることです。気まずいな、と感じた瞬間に、次のテクニックを使った一言で、居心地の良い空気に改善していきましょう」(神原さん)
「それは『見えているものについて話す』テクニックです。その場で目にしたものを、話題にすればいいので、なんの話題を切り出そうか、頭の中で考える『間』や『焦り』がなくなります。会話が途切れたら、次の流れであなたから話し出しましょう」(同)
そのテクニックは、次の3点です。
(1)周囲を見回し、気になったものの状況や様子、感想を相手に話す。
(2)相手からリアクションをもらう
(3)相手の言葉に共感+質問する
こうすることで、相手の言葉を受けて、話題を深めたり広めたりしながら、会話を続けることができます。結婚式会場で、歓談の時間に入ったときを例にすれば、次のような流れになります。
〇周囲を見回すと、料理がたくさん並んでいる。デザートのケーキが気になる!
「このケーキ、フルーツがたくさん乗っていておいしそうですね」と感想を伝える
〇相手からリアクション「そうですね」
〇相手の言葉に「ですよね! 食べてみませんか?」と共感+質問をする
出しかけた相手と一緒にフルーツケーキを食べながら、この後も感想を言い合ったり、料理の話へと広げたり、自然と会話が続くようになります。
誰でも使える倒置法をマスターしよう!
前述の、「そうですね」「ですよね!」というポジティブな要素を引き出すスキルの重要性は、誰もが感じていることではないでしょうか。
拙著「最強の文章術」でも解説していますが、「倒置法」という手法は便利です。これは、会話でも文章でも成立します。たとえば、仕事で話す相手が、プロ野球チーム「読売ジャイアンツ」のファンだったとしましょう。打ち合わせには雑談から入ることが多いですが、次のように話すのです。
【ケース1】
自分「よかったですね!」
相手「ん?......」
自分「ジャイアンツが勝ちましたね!」
相手「あー、そうですね(笑)」
【ケース2】
自分「ハンパないですね!」
相手「ん?......」
自分「原監督の采配的中でしたね!」
相手「あー、そうですね(笑)」
【ケース3】
自分「しびれましたね!」
相手「ん?......」
自分「坂本のサヨナラヒットには感動しました!」
相手「あー、そうですね(笑)」
もちろん、野球以外でも使えます。たとえば、今日の天気について「よかったですね。晴れて」。先日教えてもらったお店について「素敵でした。昨日教えてもらったお店に行きました」。先輩が見ているドラマについて「感動しました。昨日のドラマ」など。相手の「そうですね」を引き出せますから、効果があると言っても間違いはないでしょう。
さて、本書では、直感的に早く・強く・心に伝わる話し方のテクニックを紹介しています。相手に伝わる言葉の選び方と、その言葉を正しく表現する声の出し方、発音の仕方を変えるだけで、相手に与える印象は大きく変化することを覚えておきたいものです。
(尾藤克之)