萩生田光一経済産業相「何がメリットなのか不明瞭」
IPEFはどんな内容になるのか。(1)貿易、(2)供給網、(3)インフラ・脱炭素、(4)税・反汚職――の4分野で構成し、それぞれ政府間協定の交渉を始める。
貿易については、通常の自由貿易協定、あるいはそれを中核とするTPPのような経済連携協定と違い、市場開放(関税引き下げ)には踏み込まない。
たとえば、米通商代表部(USTR)のタイ代表が3月の上院の委員会で、労働・環境などの面で基準を満たした国に便宜を与える考えを示しているが、中国の人権問題を念頭に置いたものだろう。デジタル分野のルール作りなども含まれるという。
2つ目の供給網についても、半導体などの供給体制の情報共有体制を整え、災害への対応のほか、中国依存を減らす狙いが込められている。
インフラに関しては、中国が進める「一帯一路」に対抗した融資制度などを検討する見込みだ。
こうした狙いを持ったIPEFは「中国にとっては、かなり嫌なはず」(大手紙外信部デスク)という声がある。
ただし、参加国には米国という巨大市場の開放で自国の輸出を増やせるというメリットがないことになる。
TPPなどこれまでの協定の多くが、米国など先進国側の関税引き下げを「飴」に、さまざまなルール、法整備などで途上国に苦い薬も飲ませてきた。萩生田光一経済産業相は「(IPEFは)何がメリットなのか不明瞭なので、どういうルールづくりをしていくところなのか、理解を深めてもらう努力を米国はするべきだ」(5月10日の会見)と注文している。
IPEFにどこまでASEANの国々を巻き込めるか。日本のサポートも重要になる。(ジャーナリスト 白井俊郎)