「水際対策の緩和、インバウンド戦略の再構築を成長の起爆剤に」
今後、「ロシア」「中国」「米国」のトリプル危機が襲ってくる懸念がある、と指摘するのは、野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト木内登英氏だ。
木内氏のリポート「1~3月期GDP統計:リスクは感染問題から物価高・海外景気減速へ」(5月18日付)では、エコノミストたちによる最新のESPフォーキャスト調査では、次回の4月~6月期には実質GDPが前期比年率プラス5.2%に転じると予想するが、実際にはプラス3%程度の小幅成長にとどまるだろう、という。その理由として、まとめると以下の4点を挙げる。
(1)岸田政権の経済対策が、ガソリン等の価格上昇を抑える補助金制度の延長・拡充と、子ども1人当たり5万円支給など効果が限定的。
(2)中国経済の急減速が日本経済に大きな打撃となる。1~3月期の中国の実質GDPは前年同期比プラス4.8%だったが、4~6月期にはマイナスになるとの予想も出ている。
(3)ロシア産天然ガスの輸入禁止にまで踏み出す可能性があり、EUの成長率は大きく鈍化することが予想される。
(4)米国の歴史的な物価高騰への対応で、異例のペースで金融引き締め策が実施され。それが年後半から来年にかけて、景気の急減速や金融市場の混乱を引き起こす可能性が高まっている。
このように今後、世界経済に逆風が吹くことが予想されるが、木内氏は「救い」もあるとして、次のように結んでいる。
「救いは水際対策緩和が成長の追い風か。他方で、政府が6月から実施する予定の水際対策の緩和は先行きの成長に一定程度の下支えとなることが期待される」「新型コロナウイルス問題からの経済の回復が、他国と比べて大きく後れを取っている日本では、水際対策の緩和、インバウンド戦略の再構築を急ぎ、それを成長の起爆剤とすることが、物価高対策以上に政策面で求められるのではないか」
(福田和郎)