円安の影響からも一刻も早い受け入れに期待
コロナ禍が起きる直前まで、外国人観光客は日本にとって貴重な収入減だった。政府は観光を経済の柱とする「観光立国」を掲げ、訪日客数を2020年に4000万人、30年には6000万人とする目標を示していた。
コロナ禍前まで訪日客は順調に伸び、19年には3188万人になった。その消費額は4兆8000億円に上り、観光産業などへの波及効果は7兆8000億円に膨らんだとされる。
しかし、コロナ禍によってこうした収入減を一気に失い、観光や航空業界などは深刻な痛手を被っている。
これまでも経済界から早期の受け入れ再開を求める声が上がっていたが、最近では外国人の入国制限を緩和する国が増加。5月の大型連休も多くの日本人が海外旅行を楽しんだこともあり、「日本だけいつまで『鎖国』を続けるつもりか」(観光関係者)などの不満が強まっていた。
とくに、このところ為替市場で円安が進んでおり、「外国人が訪日すれば従来以上のお金を落としてくれる可能性がある」と、一刻も早い再開を期待する声が高まっていた。
ただ、受け入れの再開によって、感染拡大につながる懸念はある。このため、観光業に関係ない人などは、安易な再開を危ぶむ声が上がる。「感染動向と政権支持率の動きは連動しており、夏の参院選を控えて政府はかなり慎重に対応せざるを得ないだろう」(政治関係者)との指摘もある。
ただでさえ足元の感染者数は大型連休の人の移動の影響か、当面は感染拡大必至との見方もある。今後の感染状況次第では、受け入れ再開のシナリオは修正を余儀なくされる可能性もある。(ジャーナリスト 済田経夫)